「最初に発見された女性の御遺体と思われたものは、調査の結果、アンドロイドだとわかりました」

 ざわ、とまた会議室の空気が揺れた。
 心春もまた驚いて手を止めた。

 最近はAIだなんだと騒がれているが、あそこまで精巧なアンドロイドがあるなんて聞いたことがない。

 解散した直後、心春は和俊に向かってつぶやく。
「アンドロイドなんてありますかねえ?」

「数年前にアンドロイドの案内嬢が話題になったのをテレビで見たことあるが、もっとわかりやすい人形だったな」

「屋敷の持ち主、もとはクローン研究をしていたそうですけど、関係してるんでしょうか。機械もいっぱいありましたし……」

「それを調べるのが俺たちの仕事だ」
 和俊は難しい顔で答えた。

 刑事課に戻ったときだった。

 電話に出ていた女性が、部屋に響き渡る大声で言った。
「アンドロイドのデータ、吸い上げに成功したそうです!」

 心春と和俊は顔を見合わせた。

「課長、俺たちが聞きに行きます!」
 和俊が言い、すぐに部屋を出る。心春は慌ててついて行った。



 心春たちは大学の研究室を訪れた。

 ホコリ一つなさそうな広い部屋に、大きな機械がいくつかあった。壁に沿ってデスクが置かれ、すべてにパソコンが載っていた。
 中心の大きな台の上に、あのときの女性……アンドロイドが寝かされていた。

 汚れを落とされた姿は普通の女性と大差なく見える。

 現在はおでこから上がぱかっと開かれ、コードが伸びてパソコンにつながっていた。

 ぱっと見は人間の頭が切り開かれているようで気味が悪かった。

 近付いて見てみると、背中からも電源のようなコードが伸びていた。

 対応に出たのはこの大学でロボット研究をしている教授、石黒孝行(いしぐろたかゆき)だった。ロボット工学の権威だ。五十を過ぎていそうだった。黒縁の眼鏡をかけ、気難しい表情で彼女らを出迎えた。

 挨拶をしたあと、心春はたずねる。
「ロボットとアンドロイドの違いってなんですか?」

 そこからか、と言わんばかりに孝行は苦笑した。