九十九パーセントを超えたとき、京太郎が幸せそうに笑う画像が映し出された。

 その画像も崩れるようにして消えていく。

 孝行は必死に復元を試みる。

 が、なにをどう操作しても、それは復活しなかった。

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 心春と和俊は複雑な顔で署に戻り、顛末を報告した。

 上司たちは最初、信じなかった。

 だが、ロボット工学の権威である石黒孝行の証言、残された機械たちの鑑定書などを出され、信じざるを得なくなった。御遺体の遺伝子検査の結果もまた、その証言を裏づけた。

 警察の上層部はそれをそのまま発表することはなかった。

 アンドロイドを含めたもろもろの機械は解体され、処分された。

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 偏屈な元科学者が身元不明の四人を殺し、元恋人を含めて五人の死体を遺棄した。

 警察はそう発表した。

 彼がクローンを作ろうとしたこと、アンドロイドを作ろうとしたことは発表されたが、それらは未完のままだったとされた。警察では遺体がクローンである証明も、アンドロイドが実際に動いていた証明もできなかったからだ。

 京太郎自身が埋められていたことは、正式には発表されなかった。

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 記者発表があった日、心春と和俊は別件の捜査で住宅街にいた。

 事件は日々起きて、刑事たちを休ませてはくれない。人と人が共にすむことの軋轢(あつれき)は、幸福も不幸も飲み込んで流れ続ける。

 住宅の庭に咲く紫陽花を見て、心春はふと零した。
「如月さんは幸せになるためにクローンを作って、それでも幸せにはなれなかったんですよねえ」

「本人だけは幸せだったんじゃないか? 熱中して、人生をかけて彼女のことを考えて。俺は嫌だけどな」
 和俊が他人事のように答える。

「奥さん、大事にしてくださいね」

「してるよ」
 不服そうに和俊は言う。空を見上げ、確かめるように手を差し出した。天からの雫がぽつんと当たる。

「また降って来たな」
 和俊が傘を開いた。

 心春もまた傘を開いた。

 レイニーを思い出し、空を見上げた。

 無数の水滴は、地上をめがけて静かに降り注いでいた。





* 終 *