さみしい?

 レイニーは自嘲の笑みを浮かべた。

 それはすべてプログラムによる疑似感情だ。京太郎への想いも悲しみも自嘲もなにもかもすべて。

 レイニーは横になり、胸の上で手を組んでそのときを待った。

 人が思い出を巡るように、データをロードし続けた。

 彼は自分を愛してくれなかった。

 ならば、この愛も消しておいてくれたら良かったのに。

 そう思ったのが、彼女の最後だった。

***

 モニターに映るアンドロイドは無表情だった。

「電気を供給され、私は一時的に復活しました。ですが、なにかがもう壊れています」

「壊れてるなんてありえない! 体を動かしてみてくれよ!」
 孝行は興奮したように言う。

「私は学習し、プログラムを組み直しました」
「どういうことだ?」
 和俊がいぶかしげにたずねる。

「みなさんに話を終えたあと、自動消去します。私の全記録は消えます」
「そんな!」
 孝行が悲鳴を上げた。

「最期に、みなさんに知っておいていただきたかったのです」
 レイニーは寂し気に微笑した。涙が一粒、瞳から零れた。

 心春は信じられない思いでそれを見た。

「まるで人間のようですね。私は作られた存在で、これもプログラムなのでしょうけれど」
「待って、自分で自動消去って、それじゃまるで……」

「お聞きいただき、ありがとうございました」
 心春の制止を遮り、レイニーは言った。

 彼女が深々とお辞儀をすると、画面がブラックアウトした。
 次いで、データ消去中の文字が現れ、点滅した。

「嘘だろ!?」
 孝行は必死に中止しようとするが、中止のボタンはどこにもない。

 消去の割合を示す数字がどんどん増えていく。