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「そんなことって……」
心春は呆然とつぶやく。次々と生み出しては殺していく。どうしてそんなことができるのだろう。
「京太郎様は迷いました。また雨衣華様を作成するかどうか。その時点で六十三歳、老齢にさしかかり、育て上げることができないかもしれません。人工子宮は壊れており、作成するなら修理から始めなくてはなりません」
「それで、どうなったんだ?」
和俊がたずねる。
「京太郎様は修理も作成もできませんでした」
「どうしてだ?」
孝行がたずねる。
「病気が——ガンが発覚したのです」
レイニーは悲し気にうつむいた。
***
わかったときにはもう末期だった。
彼は治療をしなかった。死を選んだのだ。
「最初からこうしていれば……それを選んでいれば良かった」
京太郎は病の床でつぶやいた。
レイニーはなにも言わなかった。慰めの言葉はいくらでもある。が、京太郎がそれを必要としているという判断には至らなかった。
彼は死を前に、満足そうだった。
だから、ただ世話をした。
「俺は雨衣華を愛している。ずっと、迷うことなく愛し続けている」
誇らしげに、彼は言った。
病気が発覚してから半年後。
最期のときにも、彼はその名を呼んだ。
「雨衣華……」
レイニーは彼をのぞきこんだ。
「迎えに来てくれたのか」
うれしそうに彼はそう言った。
私はレイニーなのに。
レイニーは、だが、言わなかった。言うべきではないと、過去データから判断した。