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ほかの男に興味を持つ雨衣華などいらない。
すでに四十八歳となった京太郎はそう思った。
だが、どうしたって、新しく生まれる彼女と年齢が釣り合わない。自分だけが歳を取り、彼女は若返る。彼女が自分を異性として愛してくれるとは思えない。
だから、新しい自分と彼女が結ばれればいいと思った。
人工子宮は一つだったから、先に自分を誕生させた。続けて彼女を誕生させた。
それで人工子宮は壊れた。
これで最後だ。今度こそ、自分たちは幸せになるのだ。
そう思い、機械を直さなかった。
新しい彼と新しい彼女は順調に仲良く育った。
京太郎はときおり、彼女らを連れて街に降りた。
これまでの彼にはない行動だった。
レイニーは自分の中のデータを参照した。
自分と京太郎はまるで歳の差夫婦のようだ、と思考した。
京太郎が幼い京太郎と雨衣華にソフトクリームを買ってあげると、彼らは口のまわりをべたべたにして食べた。
レイニーは微笑しながら二人の口をティッシュで拭う。
ふと見上げると、京太郎がうれしそうに目を細めて三人を見ていた。
これが幸せの景色なのだと記録し、厳重に保護をかけた。
二人は順調に成長した。
京太郎は二人を学校には通わせなかった。
そもそも彼らには戸籍がない。
将来、彼らが働きに出なくても済むように、京太郎はさらにいくつかの特許をとって企業に売り込み、稼いだ。
若い京太郎が十四歳、雨衣華が十三歳になったときだった。
京太郎は彼らがキスをしているのを目撃した。
彼らは慌てて離れた。
彼らにとっては京太郎は父だ。
だが、京太郎は違った。
そのときまで、違うことに、京太郎自身も気付いていなかった。
嫉妬に狂い、若い京太郎を殺した。
悲鳴を上げ続ける若い雨衣華も殺した。