①物語の設定・主要キャラクターの説明

・物語の世界観
 剣と魔法が発展した中世ヨーロッパ風の異世界。大国として有名な、A王国、B帝国、C皇国の国境が重なる地域にある大きな辺境が舞台。三国は国境が隣接していることもあり、戦争の機運が高まっていた。そこで戦争回避のため、親善事業として荒廃した辺境の共同開拓事業が立ち上がった。しかし、実際のところは三国の国力を見せ合う事業となっている……という背景がある。
 A王国にある伯爵家の庶子である主人公のイオリは、16歳のスキル覚醒式で謎の食堂を出す『ドカ食い食堂』という外れスキルを授かる。スキルは16歳で覚醒することが多いが、稀にもっと低年齢で覚醒することもあり、彼らは『早期覚醒者』と呼ばれる。
その場でイオリは追放及び、実家が王族に媚びを売るため開拓事業への強制参加を命じられる。
 だが、イオリは追放のショックで、最高の料理人を目指していた前世の記憶、謎の食堂は前世の実家が経営していた食堂だと思い出す。ファンタジーな食材を使えば、より素晴らしい料理ができると考え、むしろ追放を喜ぶ。
イオリは辺境で開拓団の働く男向けに、“ドカ食い食堂イオリ”をオープンし、前世の知識とファンタジーな素材を掛け合わせた料理を作る。すると、営業終了後や定休日に、“たくさん食べたいけど恥ずかしい”女性たちがお忍びで来店するようになり、彼女たちにもドカ食い料理を振舞う。イオリは知らなかったが、客の女性は皆、三国の要職に就く超重要人物――“神話級の美女”であった。
そうとも知らず彼女たちの胃袋を掴んだ結果、イオリはいつの間にか、世界を代表する三国への発言力が日に日に強くなってしまう。

・主要登場人物のキャラクター紹介
①イオリ・ラブルダン(主人公)
〇性別:男性
〇年齢:16歳
〇外見:黒髪黒目。
〇身長/体重/体型:175cm/60kg/細マッチョ体型
〇性格:穏やか、楽観的、でも好きなことには真剣になるタイプ
〇スキル:『ドカ食い食堂』
・15坪ほどのこじんまりとした食堂。カウンター席は10席、テーブル席は四人掛けが2席。厨房も完備。店の一角には小さな休憩スペースがあり、イオリと後述の大吉はここで寝泊まりする。
・後に、イオリの前世の実家が経営していた食堂(前世でも大盛り料理を出すコンセプトだった)だとわかる
・冷蔵庫やガスコンロ、調理器具など料理に必要な道具はひとしきり揃っている。それらはイオリの魔力で稼働。
〇家族構成
・父
・母(本妻。イオリにとっては義母にあたる)
・弟(嫡子、14歳)
・実母(生存しているが、所在不明)
〇その他:
 ラブルダン伯爵家の庶子で、肩身の狭い毎日を送ってきた。そのため、知らず知らずのうちに、“柳に風”の精神を身につけた。外れスキル覚醒による追放のショックで、“朝比奈伊織”としての前世を思い出す。同時に、実家の食堂を継ぎたかった夢、最高の料理人になる夢も思い出す。前世では、料理人として実家の食堂を手伝っており、料理の基本的な技術は備わっている。
前世の両親の、『お客さんには、おいしいものをたくさん食べさせてあげたい』という信念を元に、辺境でドカ食い食堂を開く。辺境は魔物肉や野菜などがたくさん流通しており、前世に近い食材が手に入る環境。
イオリは“最高の料理人”を目指し、全力で腕を振るう毎日を送る。

②シルヴィ・カラベッタ(ヒロインA)
〇性別:女性
〇年齢:16歳
〇外見:銀髪のロング、赤い瞳
〇身長/体重/体型:165cm/50kg/引き締まった体型
〇性格:気難しい、ストイック
〇スキル:『剣聖』
・E級~S級までの全ての剣技が使える
〇家族構成
・父
・母
・妹(12歳)
〇その他:
 A王国の名門貴族、カラベッタ侯爵家の長女。一般的に、スキルは16歳で覚醒することが多いが、シルヴィは“早期覚醒者”であり、10歳で『剣聖スキル』を覚醒。たゆまぬ訓練を重ね、A王国騎士団が誇る最高峰の五剣士、“五天聖剣”の一角になった。
麗しい見た目と高貴な家柄、優れた剣術により、周囲からは“A王国の美天使”と呼ばれている。A王国から、“開拓事業における国力を見せつける命”を受け、辺境に派遣された。A王国から派遣された開拓団の総監督みたいな立場。
実は大食いだが、周囲が抱く理想像に自分を合わせようと我慢・努力しているため、周りには隠している。小食を装う結果、いつも食べ足りないと思っている。
辺境でオープンされたイオリの“ドカ食い食堂”を見て、覚悟を決めて閉店後にひっそりと来店する。イオリの料理の美味しさに大変感動する。また、閉店後にも拘らず快く受け入れて料理を出してくれ、ドカ食いを好奇の目で見なかったイオリ自身にも心を惹かれる。以後、秘密の常連となる。
また、後述の『大吉』にそそのかされ、本物の吊り橋効果を狙って、イオリを命の危機があるクエストデートに誘うことを画策する。
あまり人を褒めないタイプ。

③大吉(招き猫、相棒)
〇性別:オス
〇年齢:不明(見た目は若い猫)
〇外見:金色でやたらと眩しい、可愛い、精霊みたいな存在なので宙に浮いている、常に「千万両」の小判(本物の金)を片時も話さない
〇身長/体重/体型:30cmくらい/4kgくらい/スレンダー
〇性格:お金が大好き
〇スキル:特になし
〇家族構成
・イオリ
〇その他:
 前世のイオリが買い、食堂に置いていた招き猫が精霊化した存在。前世では、関西地方の工場で生産され、その後各地域を渡ってイオリ食堂(都内)に来た経緯があるため、中途半端な関西弁で話す。お金が大好きであり、毎日の売上を勘定するのが趣味。金儲けの作戦を思いつくと全身の光が増し、瞳がキラキラに輝く。
食材を買うときは必ず値切り、1ゴルド(仮想の通貨。1ゴルド≒1円)でも安くなるよう全力を注ぎ、常連客を作ることに全力を注ぎ、チラシを作って宣伝するなど、食堂が繁盛するよう全力を注ぐ。
 イオリがシルヴィやその他超重要人物の女性たちと仲良くなれば、もっと食堂が繁盛すると考え、イオリにとってはありがた迷惑な作戦を色々と考えてくれる。

④サン・モロゼック(ヒロインB)
〇性別:女
〇年齢:14歳
〇外見:短い赤髪、赤目、小柄、ショートカット、身長より長い杖をいつも持っている
〇身長/体重/体型:150cm/55kg/やや巨乳体型
〇性格:マイペース
〇スキル:『賢者』
・E級~S級までの全ての魔法が使える
〇家族構成
・母
〇その他:
 14歳にして、B帝国で四人しかいないS級魔法使いの一人。B帝国の国力を他国に見せつけるため、辺境に派遣された。8歳でスキルを覚醒したこともあり、通称、“奇跡の偉才”と呼ばれる。平民出身だが、功績により伯爵の位を授かる。
 しかし、生まれつき体内の魔力が膨大であり、食事をたくさん取らなければ疲れてしまい活動できなかった。周囲の女性でたくさん食べる人はいなかったので、隠れて食べていた過去がある。イオリ食堂では人目を気にせず、おいしい料理を食べられるので常連になった。イオリに対しては兄のような不思議な印象を持つ。

⑤ライム・シャンプリオン(ヒロインC)
〇性別:女
〇年齢:20歳
〇外見:ブロンドヘア、碧眼
〇身長/体重/体型:170cm/60kg/シルヴィよりスレンダー
〇性格:プライドが高い、上から目線
〇スキル:『暗殺者』
・気配を絶ったり、人知れず行動したりする技術に優れる
〇家族構成
・父(皇帝)
・母(妃)
・姉2人(第一皇女、第二皇女)
〇その他:
 C皇国の特務機関の総司令官で、第三皇女。皇女なので、出される食事は健康に気をつかった味気ないものばかりだった。そのせいでスレンダーな体型になったと思っており、高カロリーかつ味の濃い食事に憧れを抱く。イオリの食堂に来てからは元来の食欲が解放され、「こんな庶民飯、召し上がる人の気が知れませんわ。おほほほほ」と馬鹿にしながらたくさん食べる。

②冒頭部分のプロット
【第1話】
 主人公のイオリは16歳の誕生日、“スキル覚醒式”にて『ドカ食い食堂』という謎のスキルを授かる。その場で使ってみると、“イオリ食堂”という看板が掲げられた、これまた謎の食堂が出現する(大衆食堂みたいな感じの見た目)。引きつった顔の父に「入れ」と命じられ中に入ると、記憶はないのになぜか見覚えがある。
 突然、猫の模型(招き猫の大吉)が動き出し、『また会えて嬉しいぞ~、イオリ~!』と騒ぎ出す。急いでスキルを解除すると食堂は消えるも、大吉は消えない。家族からは完全に外れスキルと認定され、さらには義弟(14歳)が『上級魔法使い』という強スキルに早期覚醒したことがわかる。
 イオリは外れスキル持ちと言われ、三国共同の開拓事業が始まった辺境への追放を命じられる。イオリはショックを受けるも、その衝撃で日本人としての前世の記憶――最高の料理人を目指していた記憶を思い出す。イオリは、むしろ追放は良い機会と捉え、「ファンタジーな食材を使って、今までに作ったこともないすごい料理を作る。この世界で料理の道を極めよう」と決意する。
最低限の金品や生活必需品をまとめ、大吉とともに辺境行きの馬車に乗る。


【第2話】
 イオリと大吉は辺境に着く。広大な荒れ地で人々が懸命に働いており、活気があふれている様子。イオリはさっそく店を出そうとするが、まずは出店の許可を得た方が良いと思い、A王国の騎士団が運営する臨時役場兼駐屯地に行く。このとき、偶然対応に出てきたのがシルヴィで、イオリは“ドカ食い食堂”の概要について説明する。シルヴィから、「新規の店は専用の敷地に、自由に出店して良い」と教えられる。大吉は場所代について細かく聞くが、必要ないと言われ大喜びする。
 イオリは専用敷地の一角で、“ドカ食い食堂”を召喚する。厨房の調理器具などは問題なく使えることを確認するが、肝心の食材がない。まずは食材を調達することにし、イオリは大吉とともに食材売り場に行く。肉屋や八百屋など、どれもファンタジーな食材がいっぱいで、イオリは興奮する。イオリが調理方法などを聞くとともに大吉が巧みな話術で値下げ交渉をし、通常より安く仕入れることができた。
昼食時を狙って開店すると、さっそくA王国騎士団の男グループが来店する。イオリは前世の経験をもとに作ったドカ食い料理を振る舞う。騎士たちは大変に満足し店を出る。その後も開拓団で働く面々が訪れ、イオリは忙しくも楽しく料理を作っていく。
 三人称視点に視点変更。“ドカ食い食堂”に最初に来店した騎士団は駐屯地に帰還すると、料理の感想を述べ、上官であるシルヴィにも伝える。その日の深夜、シルヴィはこっそりと“ドカ食い食堂イオリ”の元へ歩き出す。

【第3話】
 深夜0時頃、イオリは食堂を閉店する。大吉と相談した結果、営業は昼前から始め、深夜0時過ぎに閉店することに決まった。大吉は初日の売り上げを勘定し、かなりの売り上げに喜ぶ。調理器具を一通り洗ったりして片付けていると、シルヴィが訪れる。「閉店後ではあるが、何か作れるか?」と尋ねられる。イオリは了承すると、シルヴィは“炒飯のおかずは豚丼セット、ニラ餃子付き”――肉盛り沢山の特製炒飯(3kg)、ニラ餃子(18個)、ミニ豚丼(800g)を注文する。
 シルヴィはイオリの作った料理を食べると、「くっ……殺せっ!」とか言いながら美味しさの感激で涙を流す。※食事シーンは、ヒロイン視点か三人称視点で、どれだけおいしいのかをより詳しく書きます。
食事が終わると、シルヴィは「来店したことを秘密にしてほしい」と頼む。イオリは了承し、シルヴィは“秘密の常連”になる。
 その日からイオリは、“辺境の大食神”として有名になっていく――。