「どういうことリスタ? 洗脳されてるって」
 
 「剣を交えて分かったことなんだが、クルスの剣には龍力と闇が混じっていた。恐らくローズに洗脳されたのだろう」
 
 クルスはローゼの龍力で思考能力も操られているのか。
 
 確かにクルスの行動には無駄な部分が多々あった。
 
 するとローゼが拍手をして私たちにの所に来る。
 
 「あははは! クルスやられちゃったかー! でもあんま強くなかったし当然か!」
 
 それを聞いたリスタは剣をローゼに向ける。
 
 リスタの目からは殺意が溢れている……その目には迷いはないといった意志が感じられた。

 リズ達もボロボロになりながらも武器をローゼに向ける。

 流石に戦闘が続いたせいかリズ達の体は限界を迎えている。

 これ以上は戦わせられない......。今この場で戦えるのはリスタと私だけだ。

 私はクルスを安全な場所に移動させたあと、立ち上がり戦う準備をする。

 リスタ達も戦闘態勢を維持したまま待機している。するとローゼが口を開く。
 
 「王国最強の2人を相手するなんてきついなあああ!」
 
 するとローゼは影を操り、四方八方に散らせる。影は私たちに襲いかかってくる。
 
 「一閃」
 
 リスタの一撃が影を切り裂いていく。

 凄まじいほどの魔力を剣に流し込み、影が切り裂かれる。

 だが、影の数が多すぎて全てを防ぎきることが出来ない。

 するとローゼが笑いながらスキルを発動する。
 
 《暗魔龍爪!》
 
 すると影が龍のような形状になり私たちに襲いかかる。

 するとリスタが私に向けて叫ぶ。
 
 「ラゼル! 私がこの影を防ぐから攻撃に回ってくれ!」
 
 私はリスタの指示に従い、攻撃に回ることにする。
 
 《毒糸ッッ!》
 
 私はローゼに向けてスキルを発動する。
 
 先ほど魔物を倒すために使った技だ。

 糸と毒を組み合わせて強化し、放つというもの。

 毒を付着させているので食らった相手を溶かすことも出来る。
 
 そして私は魔物に使用した技と同じように数発の毒糸を発射する。

 その毒糸を見たローゼは焦った顔になる。
 
 ローゼは手から影の龍力を放出し、糸を消滅させようとするが、糸に触れた途端影は溶けてしまう。
 
 この糸なら影だろうと切り裂くことが出来るみたいだ。

 私は毒糸の量を増やし、広範囲に展開していく。

 そして動けないローゼに向かって発射していく……。

 ローゼは何かをしているように見えるが防ぐことが出来ないようだ。

 そのまま私の毒糸はローゼの体を捉える。

 そして毒糸はローゼの体を拘束する。

 ローゼの体に防御魔法が掛かっているが溶けはしない。

 だが体が麻痺しているのかローゼは身動きが取れなくなる。
 
 「今よリスタ!」
 
 「ラゼル、よくやった」
 
 その瞬間リスタは剣を空天に向けて掲げ、スキルを発動する。
 
 《剣聖》のスキルによってさらに剣は赤く光り輝き、周りが明るくなるほどになっていた。
 
 リスタの剣には凄まじいほどの風が集まり始める。

 おそらくスキルによる一撃なのだろう。

 空間に歪を作りながら一気に魔力が広がっていく。
 
 「ま、待ってえええ! 私はヨルフに龍力を貰っただけなんだよ! だから許してよおおお!」
 
 ローゼは命乞いをしてくるがリスタは剣を構え、ローゼにこう叫ぶ。
 
 「悪行をした者にはそれ相応の裁きがある。そしてそれは死だ」
 
 「まっ......」
 
 《紅炎の剣》
 
 剣を振り下ろすと同時に凄まじいほどの風の斬撃が放たれる。
 
 赤く輝き始めた紅炎が空高く昇ると一瞬でローゼに襲い掛かり、凄まじい爆風を生み出しながらローゼの体を呑み込んでいくのだった。

 ローゼを包み込んだ紅炎は容赦なく燃え続け、ローゼの体を灰に変えていく。

 そして跡形もなく消え去った。
 
 「終わったな......」
 
 リスタは剣をしまい、私の元に歩いてくる。