「くそ!本当になんなんだ、アイツらは! 僕に何の恨みがあってこんな事をするんだ?  くそ!」
 
 僕は召使いに対して怒りだけが溜まる。
 
 どうして僕はこんな扱いを受けている?
 
 そんな状況に溜まりまくったストレスが爆発する。
 
 結局、この日は怒りが収まらずそのまま眠りにつくのだった……。
 
 次の日……僕は良いことを思いついた。
 
 「そうだ……僕が魔物を討伐すれば良いんだ!」
 
 僕なら魔物の10匹や20匹くらい簡単に倒せる!

 それに僕が強くなればアイツらも舐めた口は利かないはずだ!
 
 よし、じゃあ早速出掛けるか! そう決めると僕は部屋を出て階段を下りる。
 
 ここ最近で発動されたスキル、《剣聖》でモノを言わせてやろう。
 
 そして僕は上手くいけば剣聖の力を使ってアイツらを見返してやる! そんな気持ちで高笑いを浮かべながら父の元に足を運ぶ。
 
 「父上! 僕は今から魔物を討伐してきます!」
 
 僕は自信に満ちた表情で父に言う。

 すると父は何食わぬ顔で答えてくる。
 
 「ふむ、失敗は許さんぞ」
 
 僕は《剣聖》を手に入れた。

 その自信もあるため更に声を張り上げる。
 
 「もちろんです!」
 
 そう言って僕は家を出たのだった。

 家から徒歩三十分ほどの所にある草原に来た僕は早速、魔物を探し始める。
 
 すると早速巨大な蛇の魔物が現れる。
 
 「きたきた! コイツで僕の力を思い知らせてやる!」
 
 そう言って腰に掛けていた剣を抜き、突っ込んでいく。

 そして先手必勝とばかりに《剣聖》を発動する。
 
 本来剣聖のスキルは身体能力の向上、そして剣聖のスキルを持っていると精霊が契約なしで力を貸してくれるらしい。
 
 「まずは身体能力の強化だ!」
 
 そう言って僕はスキルを発動する。

 だが一向に身体能力が向上する気配がない。
 
 なぜだ?なぜ筋力が上がらない?そう考えていると、大蛇は尻尾を振り回してくる。
 
 僕はそれをもろにくらって吹き飛ぶ。
 
 ダメだ!一旦逃げよう!そう考え走り出すが、足がもつれて転んでしまう。

 慌てて体勢を立て直すが、すぐに追い付かれてしまう。
 
 どうして……剣聖は最強のスキルなんじゃ……。

 いや、まだだ!僕には精霊がいるはずだ!そう思い次は精霊を呼び出す。
 
 よし!これなら!?これで魔物は倒せるはず!そう思い剣を思いっきり振ってみるが、何故か蛇は無傷だ。
 
 それどころか僕の周りには精霊が見えない。

 どういうことなんだ!?剣聖は《最強のスキル》なのに……。
 
 僕は何度振っても巨大な蛇には攻撃が通用しないでいた。
 
 すると大蛇の頭が近づいてきたので咄嗟に剣でガードするが、そんな抵抗が通用するわけもなく、牙で剣が折れてしまう。
 
 「ガァァァァァ!!!!」
 
 大蛇が僕を襲おうと口を開き毒を吐き出す。

 吐き出された毒が僕に一直線に向かってくる。
 
 「もう無理だ!!!!」
 
 僕はその場から立ち去る、泣きながら必死で逃げてしまう。
 
 後ろから蛇の声が聞こえてくる。僕は耳を塞ぎ、遠ざかろうと必死だ。

 だが何か音がするような気がしてふと振り返る。

 すると大蛇は途中から僕に呆れたのか追わなくなっていた。
 
 安心した僕は腰が抜け座り込む。
 
 「何なんだよこれ……おかしいだろ……剣聖じゃ倒せないのか!? 」
 
 そう思ってしまうが、とにかくここから早く去って誰かに助けを求めようと足を引きずりながら帰路につくのだった……。