「はははは! 姉さんがいなくなってから最高だぜ! 外れスキルなんかが家にいたら汚れてしまうからな!」
クルスは外れスキルを持った姉さんが家から追放されたのを喜んでいる。
なにせ外れスキルだぞ?
僕の姉さんが外れスキルだなんて周りに知られたら恥ずかしいなんてものじゃない。
そんな事を考えながら、追放された姉さんが一人になって行く姿を想像する。
そんなこんなで姉さんがいなくなってから数日後、僕に剣聖のスキルが発動した。
本当に嬉しかった、やはり俺は凄い人間だと実感してしまうほどに。
「記念に飯でも食うとするか! おい召使い! 僕に何か料理を作れ!」
召使いにそう言うが、全く動いてくれない。
おかしいな?以前は偉そうにしていたから言うことを聞いていたのに……。
それどころか召使いの女は僕を軽蔑するような目になっていく。
「おい! 僕を誰だと思っている! レスト伯爵家であるクルス・レストだぞ!」
少し脅しつけるように強い言葉を放つが、女は聞こえていないのか動こうともしない。
おかしい……これじゃあまるで僕が居ないかのような反応だぞ?
そう思った僕はあたりを見渡すと召使いが離れていく。
「はぁ? 僕にそんな反抗的な態度をとっていいのか? 僕のスキルは《剣聖》だぞ!」
僕が大声をあげて脅すも全く動じない召使いにイラつく。
「な、何だよ。言っとくがな! お前らなんか簡単にクビにできるんだからな!」
すると女の召使いが口を開く。
「ラゼル様が出ていった事にクルス様は何も感じていないんですか?」
「は、はぁ?何を言ってんだ?」
何を言っているのかと聞き返すが、答えてくるのはまた違う女の召使い。
「ラゼル様は外れスキルでしたが私たち召使いにも優しく接し、人に気遣いができる素晴らしいお方です」
「あ? もう何を言ってんだよ!」
そうして周りの召使いたちの目は冷たい目線を向けてきている。
すると再び女の召使いが話しだす。
「ラゼル様を追放したこの家はもう終わりですね」
「ああ? 何だと? もう1回言ってみろよ!」
この召使いは僕を見下していると思い、ふざけるなと思い僕は掴みかかる。
だが召使いは顔色を一切変えない。
「お前! 僕に歯向かうとはなんだ、おい!」
「そうやって感情的に走り、暴力を振り出す、それで当主が務まるとでも? それではレスト家は滅ぶだけですね」
「務まるに決まっているだろうが! 僕は最高のスキルを当てた才能ある人間なんだ!」
僕の持っている《剣聖》は最強のスキル、だからレスト家に外れスキルを持った人間なんていらないんだよ。
「……またそれですか? 私たち召使いはあなたが次期当主になれるとは思いません」
女の召使いはそう言い放ちクルスの手を振り払う。
「ああ? ふざけるなよ!」
「では仕事に戻ります」
何なんだ!ここの召使いどもは、本当に何なんだよ!僕は次期当主だぞ!
「何が気にくわないんだよ!くそが! 」
もう何もかもめんどくさくなった僕は、ただ怒鳴り散らしながら部屋に戻る。