伯爵の勧めに頷くと私たちはその本を受け取り最初のページを開いてみた。
 
 そこに書いてあった文は短く、読むのにもさほど時間は要しなかった。
 
 この世界を創造した龍神王、そしてそれに仕えた五龍神……。
 
 東、西、南、北、中央、に龍が降り立ち、世界を支配していた。
 
 ある日、五龍神は人間に龍力という力を与え、人間は瞬く間に進化・発展を遂げていく。
 
 やがて炎を生み出す者、水を作り出す者……多種多様なものが生まれ五龍神と同等の存在を手に入れる事が出来た。
 
 しかし、力を得れば野望が生まれ龍の力を使おうとする者が現れる。
 
 そうやって龍力を奪い合って出来たのが龍神教だ。
 
 その時、龍神王はこれを重く受け止めることなく、放置していたそうだ。
 
 龍神教には仲間意識はなく、目的も不明、だがそれぞれが五龍神の意志を忠実に守っている。
 
 その結果が今のこの世界らしい。
 
 これを知る龍神教徒たちはこの大陸の各地方でゆっくりと確実に信者を増やしていって今に至るようだ。
 
 「今回私たちが遭遇した白龍というのは?」
 
 疑問に思った私は伯爵に聞いてみた。
 
 すると彼は眉間にしわを寄せながら口を開く。
 
 「白龍は西を担当している龍神だ。今回遭遇したヨルフ・シルキーは白龍の龍力を持っていたんだろう」
 
 そんなヘスター伯爵の言葉に私はある考えが浮かんだ。
 
 龍神教のヨルフ・シルキーが五龍神の白龍を担当していていたと、じゃあ本物の白龍は今どこにいるのだろうか。
 
 そんなことを考えているとヘスター伯爵は目を閉じ大きく深呼吸をした。