「こんな影で僕を封じ込めると思っているのかい? 勘違いはやめてほしいなぁ」
 
 するとレズリタが立ち上がり、ヨルフに向けて魔法を詠唱する。
 
 《フレイム》
 
 ヨルフの真下に大きな魔法陣が現れるとその中から巨大な火柱が空高く噴き上げる。
 
 ヨルフはその火柱をまともに食らうが笑いだす。
 
 「痛くも痒くもないなあ!」
 
 ヨルフを覆う影が引きちぎれていく。
 
 そしてヨルフが距離を詰めようとした瞬間、エリックとリズが飛び出してくる。
 
 「さっきのお返しよ!」
 
 2人の攻撃がヨルフに届く事はなかった。2人の剣が空を切り、地面に突き刺さる。
 
 「すまねえラゼル、助太刀は無理そうだ。剣も当たらなかった」
 
 「ごめん、 あたしたちじゃあ無理そう……」
 
 2人は息を上げながら私の方を見る。
 
 無理もない、2人の剣捌きよりもヨルフの動きの方が数段速いのだから。
 
 だったら私があいつの動きを封じるだけだ。
 
 「私がなんとか動きを止めるから、止めた後は任せるよ」
 
 エリックとリズは静かに頷く。
 
 恐らくそれが最善の策だろう。
 
 「そこで何をしてるんだい?  無駄な足掻きはやめて早く死になよ」
 
 ヨルフは私たち3人に目を向け問いかけるが当然私たちは答えること無く行動に移す。
 
 私は今ある魔力を全部使いスキルを発動する。
 
 《ダークネス》
 
 影が集まり始めヨルフの足を地面ごと捉え引き込もうとする。
 
 「無駄な足掻きかい? そんなんで僕を倒せるわけないよねえ」
 
 ヨルフは余裕をかましているが先ほど出した《ダークネス》とは訳が違い今は全魔力使っている。
 
 私は今発動できる魔力を全てつぎ込んで影の封印を強化しようとしている。
 
 すると影は私の思いをくみ取ってくれるかのようにどんどんヨルフの体を覆い、やがてすべて飲み込み始める。
 
 「は?」
 
 ヨルフは先ほどの余裕とは一転して困惑した表情を見せる。
 
 「リズ! エリック! 今だよ!」