「ウィンドスライス」
大量の風の刃がヨルフの前方を通り過ぎる。
するとヨルフは横に飛んで避けた。
「くそ、これなら! イフリートフレア!」
しかしまたもや攻撃は届かなかった。
そしてレズリタのもとに瞬間移動で近づいていく。
「はいはい、君の魔法はこれで終わりさ」
レズリタの目の前に高速で移動し蹴りを入れる。
レズリタはそのまま数メートル後方に飛ばされてしまった。
「じゃあ最後は君だけかな? それはそうと何で君だけ魔法をあまり詠唱しないんだい? もしかして僕が怖いとか言わないよね?」
そう言いながらヨルフが私に歩み寄り顔を近づける。
私は口角を僅かにあげて微笑み言った。
「お前の能力と動きを分析してたからだよ」
そう言うと私は地面に向けて《ブリザード》を放つ。
ヨルフは瞬時に横に飛び、魔法をよけ、こちらに顔を向ける。
「なにがしたいんだい? 時間稼ぎかな?」
「さあね」
私は両手を広げてスキルを発動する。
《ポイズン!》
両手を空に向けて毒の液体を飛ばす。
液体は地面に落ちていき広がっていく。
「これで少しは動きづらくなったんじゃないかな?」
余裕そうに私が言うとヨルフは不愉快そうな表情をする。
「毒か……なんでこんな能力を持ってるんだい?」
「どうでもいいでしょ、ここであなたは死ぬんだから」
「君は本当に礼儀がなってないね? こっちは質問をしているんだから答えるのが道理ってやつじゃないのかい?」
「あなた質問に答える義理はないけど」
私が言いきるとヨルフが眉間にしわを寄せ怒りの表情を見せる。
「もういい、君は徹底的に痛めつけてから殺すことにするよ」
ヨルフが手を空に向けると竜巻のような巨大な風が渦巻く。
風を纏った手を握りしめると、今までとは比べものにならない威力の風が私に向けて解き放たれる。
私は近づいてくる竜巻に手を挙げスキルを発動する。
《ブリザードッッ》!
辺り一面に放たれた冷気と竜巻がぶつかる。
だが竜巻の勢いはおさまるどころか更に激しさを増す。
「どうした? さっきまでの余裕の表情はどうしたんだい?」
私は内心焦っていた。このままだと確実に死ぬ……。
そう分かってしまうほどの威力だった。
するとエリックとリズ、そしてレズリタが戦闘に参加する体制に入る。
なんとか打開策を考えなければ……。
しかし今のスキルではダメ、物理攻撃も効かないこの状況では魔法しかないのだがその魔法だって通じるか分からない。
そう思っていると私の前にスキル一覧が現れる。
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あなたが使用できるスキル一覧
・《コピー》
・《ポイズン》
・《ブリザード》
・《影の龍力》
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ああ、見覚えがあるスキルが出てくる。
この3つは私がこの世界で最も使い込んだスキルだ。
ただし、4つめのスキル《影の龍力》は一度も使っていない。
なぜならあの少女からコピーしたスキルだからである。
もしこのスキルを使えば精神が崩壊するかもしれないと思ったからだ。
現にあの少女は精神が壊れてしまっていた。
だけど、この場面でスキル一覧が出るということは何かしら意味がある。
覚悟を決めた瞬間、私は前へ向けて右手を伸ばす。
私は静かに目を閉じて叫ぶ。
《ダークネス》
すると影が地面を這うように広がっていき、衝撃波を完全に受け止め打ち消した。