俺はカッと目を見開いて、生にしがみつこうと決めた。

 記憶の中の鹿目さんが、安易に死を選ぶことを許してくれなかった。

 本気で抵抗すればなんとかなるかもしれない!

「誠道さん。どうか安らかに」

「うるせぇえええええ!」

 叫びながらミライの手を横から払うと、包丁がミライの手から吹っ飛んで、床の上を滑っていく。

「なっ、反撃?」

「このやろぉおおお!」

 吹っ飛んだ包丁をミライが目で追った隙をついて両肩を掴み、

「ふんがっ!」

 と情けない声漏らしながら勢いをつけて体を反転。

 今度は俺がミライの上から押さえつける。

 よし、なんとかこれで――って、ミライの体を反転させたときになんらかの不可抗力が働いて、制服のスカートがめくれあがってるぅ!

 彼女の程よい肉づきの太ももと、可愛らしい白のリボンがついた水色のパンツが見えちゃってるぅ!

「あ……これは、その、つまり」

 しかも、彼女の広げられた足の間に両膝ついてるじゃん俺!

 この体勢ってもしかしてもしかしなくてもせいじょう――あぶないあぶない。

 彼女の可愛らしいパンツを見つめつづければ隙が生じ、反撃されかねない。

 それに俺は紳士だ。

 女の子のパンツなんて見えていてもなにも感じな――――むにゅぅぅ。

「む、むにゅぅぅ?」

 なんだ? この極上の柔らかさは。

 右手を動かすとむにゅりむにゅりと五本の指が心地よく沈み込んでいく。

「あっ、んんっ」

 なんかミライさんが喘ぎ声を上げたんですけど、背中でも打ったのかな?

 それにしても気持ちいいなぁ。

 もうちょっと揉んじゃおう。

 むにっ、むにゅぅ、むにゅっ…………って、これ。

 俺は、ようやく自分が行っていることを理解した。

「もうっ、誠道さんのえっち。どさくさに紛れてスカートをめくって、おっぱいまで揉みしだくなんて」

 頬を紅潮させているミライに、ゴミを見るような目を向けられる。

「ちちち、違うんだこれは! 流れでそうなっただけで」

「流れで? つまり責任を取るつもりもないのに、誠道さんはえっちなことをする淫獣」

「だから違うって!」

「違うなら、いい加減おっぱい揉むのやめてください」

「……あ、ごめんなさい」

 吸引力の変わらないただひとつの柔らかさを持つおっぱいだったので、つい弁解している間も揉みつづけてしまいました。

 俺はミライの足の間から飛びのく。

 すぐにミライは起き上がり、捲れたスカートを手際よく直した。

「まったく。本当に土変態男さんは」

 今回ばかりは否定できないのが悔しい。

「まあでも、生命の危機を感じると子孫を残そうと躍起になると言いますから、これもある意味本能的には正しい行動」

「そうだよ! お前が俺を殺そうとしたのがすべてのはじまりなんだ。俺は抵抗しただけでちっとも悪くないからな!」

 ミライが墓穴を掘るようなことを言ったので、勢いに任せて自身の無実を主張した、まさにそのとき。

 自動音声ソフトから流れるような女の声が、どこからともなく聞こえてきた。



「おめでとうございます。経験値を獲得しました」



 …………え。

 どういうこと?

 なんで経験値がもらえてるの?

「ようやく、ですか。ふぅ。手がかかりますね。私がいないと経験値も稼げないなんて」

 呆れたようにミライが呟く。

 ってことは、もしかしてあれか?

「俺の経験値って、女子のおっぱいを揉むことでしかもらえないの?」

 なにそれさいこ――最悪じゃん!

 つまり俺は経験値獲得のために、ミライのおっぱいを堪能――仕方なく揉みつづけなければいけないと、そういうことなんですね。

 それで俺だけサポートアイテムが女の子なんだ!

 神様ありがどう!

「俺はこれからもおっぱいを揉む生活がつづけられるんだぁああ!」

 あ、興奮して鼻血出た。

 異世界生活ってサイコー。