誠道とミライが逃げた後、取り残された大度出独裁国家の四人は、しばらくの間ぽかんと突っ立っていた。

 やがて、大度出がぐっと拳を握り締めた。

「そういうこと、か」

 大度出はにやりと不敵に笑う。

 石川がレッサーデーモンに勝利したと知った日は、世の中のすべての物を破壊したくなるくらいの怒りを感じた。

 自分たちが負けた相手に石川が勝ったことは、大度出にとって何物にも代えがたい屈辱だった。

 でも、真相は違っていた。

 大度出皇帝が、クソ引きこもりの石川誠道より弱いはずがないのだ。

「あの女だ」

 ちょっと考えてみれば、石川なんかがレッサーデーモンに勝つなんて、そんなことはあり得ないとわかる。

 怒りで我を忘れていた。

 レッサーデーモンを倒したのは石川じゃない。

 あの女がレッサーデーモンを倒したのだ。

「しかも、俺たちが戦って弱らせたところを……ただの漁夫の利のくせに」

 大度出は、自分がやられた魔物に他の誰かが正攻法で挑んで勝てるはずがないと思い込んでいるのだ。

「つまり、あの女をぶちのめして屈服させればいいってことだな」

 レッサーデーモンを倒したあの女をぶちのめせば、この屈辱も綺麗さっぱり晴れるはずだ。

 今日久しぶりに対面して、石川はただのクソ引きこもり野郎だと再認識した。

 仲間に引き込んでボコって敵の真っただ中に放り込み、無様に逃げ惑うさまを観察して楽しもうと思っていたが、それはもうやめだ。

 あんな弱虫を相手にしたって意味がない。

 あの女をぶちのめして屈服させる。

 レッサーデーモンを倒すようなやつだから純粋に戦力になるし、あいつの性別は女。

 いろいろと楽しめもするということだ。

「そうだ。あの女で遊ぶ様子を石川に見せれば……楽しいことになりそうだなぁ」

 しかもあの女、かなりの美人だった。

 同じ高校にいたような気がするが、まあそんなことはどうでもいい。

 そもそも、あんな美人が石川なんかのそばにいるなんておかしいのだ。

 大度出皇帝の側にいるのが、正しいことなのだ。

「そうと決まれば。おい! お前ら! うちに戻って作戦決めっぞ。鶏真、ワープだ」

「っす!」

 大度出が鶏真に指示を出して、鶏真がワープと唱えると、彼らの姿は跡形もなくその場から消えた。