「こんな噂知ってる?青い月の日に寝る前に枕の下に会いたい人の名前を書いた紙を入れると、夢の中で会えるんだって」

クラスメイトたちが話しているのが聞こえた。

私はそっと耳を傾けた。

「それって有名人とかにも会えるの?」

「ううん。会えるのは実際に会ったことのある人でないとダメなんだって。そんなに深い中じゃない人にも会えないみたいだし」

「なんだーつまんないの」

もう一人の女の子がそう言うと、今度は別の話題を話し始めた。

「会いたい人に会える…」

私は小さくつぶやいた。


『そんなの迷信に決まってるでしょ?』

私は友達の愛菜にその話をした。

「でもほんとだったら試してみたいし…」

『拓也に会いたいのはわかるけどさ、もう一年だよ。沙羅も前に進まないと』

「うん。それはわかってるんだけど…」

どうしても会いたかった。

私の好きな人に。

『あ、私塾にいく時間だ。ごめん。沙羅、また今度ね』

そういうと、愛菜からの電話は切れた。

私はスマホの画面を閉じると、ベットに横になった。

「迷信でも、会いたいんだよ…」


私には、付き合っていた恋人がいた。

名前は阪口拓也。

高校に入ってから同じ委員会に入って、よく話すようになった。

そして、私たちは付き合うようになった。

初めてできた彼氏だったので、私はすごく嬉しかった。

おとなしい性格の拓也は、口数は少なかったが、私のする話を楽しそうに聞いてくれた。

私は、笑顔で聞いてくれる拓也に話をするのが楽かった。

でも、去年の冬、拓也は交通事故で亡くなった。

それ以来、私はあまり話さなくなった。

最初は私を気遣って話しかけてくれていた友達も、徐々に私に話しかけることはなくなった。

一番の親友だった愛菜も、夏休み前に転校してしまった。

今では、教室で本を読んだり図書館に行くことしか楽しみがない。


次の日も、読み終わった本を返そうと、図書館にやってきた。

図書室の掲示板に、ブルームーンのことが書かれていた。

「ブルームーンって青い月のことだよね?」

見ると、今日がそのブルームーンの日のようだ。

今日、試しにやってみることにした。

私は、枕の下に拓也の名前を書いた紙を入れて眠りについた。

私は真っ白な空間に立っていた。

「沙羅」

優しくて懐かしい声が聞こえた。

「拓也!」

優しい顔で微笑む拓也がいた。

「会いたかった…拓也」

「俺も、会いたかった」

そう言って拓也は優しく抱きしめてくれた。

「やっぱり、噂はほんとだったんだ」

「噂?」


私は、青い月の話をした。