1945年4月 沖縄に米軍が上陸し
守備隊との熾烈な戦いが続いていた

連合艦隊司令部は呉近辺で生き残っていた
戦艦大和、榛名、伊勢、日向
空母天城、葛城、
重巡利根、青葉、
軽巡矢矧
駆逐艦涼月、冬月、花月、雪風、響、磯風、浜風、初霜、霞、朝霜、榧、槇
に対して、天一号作戦(菊水作戦)を発令

1. 「【電令作603號】
第一遊󠄁擊部隊〈大和、天城、葛城、榛名、伊勢、日向
利根、青葉、二水戰、三十一戰ハ
海󠄀上特攻隊󠄁トシテ八日黎明󠄁沖繩ニ突󠄁入ヲ目途󠄁トシ
急遽出擊準備ヲ完成スベシ。部隊󠄁行動未掃󠄁海󠄀面の對潛掃󠄁蕩を實施させよ。
海󠄀上護衞隊󠄁長官は部下航空󠄁機で九州南方、南東海󠄀面の索敵、對潛警戒を展開せよ」

2. 「【電令作607號】
海󠄀軍部隊󠄁及󠄁び六航軍は沖繩周󠄀邊の艦船󠄂攻擊を行え。
陸軍第十方面軍第三十二軍も之に呼應し攻擊を實施す。
7日黎明󠄁時豐後水道󠄁出擊。8日黎明󠄁沖繩西方海󠄀面に突󠄁入せよ」

3. 「【電令作611號】
一 帝󠄁國海󠄀軍部隊󠄁及󠄁第六航空󠄁軍ハX日(六日以後)全󠄁力ヲ擧ゲテ沖繩周󠄀邊艦船󠄂ヲ攻擊擊滅セントス
二 陸軍第八飛行師團ハ右ニ協力攻擊ヲ實施ス 第三十二軍ハ七日ヨリ總攻擊ヲ開始敵陸上部隊󠄁ノ掃󠄁滅ヲ企圖ス
三 海󠄀上特攻隊󠄁ハH日黎明󠄁豐後水道󠄁出擊 Y日黎明󠄁時沖繩西方海󠄀面ニ突󠄁入 
  敵水上艦艇󠄁竝ニ輸󠄁送󠄁船󠄂團ヲ攻擊擊滅スベシ Y日ヲ八日トス

要は、水上艦隊で沖縄に殴り込みをかけ
敵機動艦隊の網を突破できればそのまま座礁させ
地上部隊と合流し
その巨砲を砲台とする作戦だった

徳山沖に停泊中に作戦命令が下されると、
陸にあったありったけの重油を各艦に移送した
搭載量は大和3000t、伊勢、日向、榛名、各2000t
天城、葛城各2000t、利根、青葉各1500t
矢矧1200t、各駆逐艦500~550t

この際、タンクの燃料が足らなくなったため
呉に停泊中の大淀などから燃料をもらった


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第一遊撃部隊出撃
豊後水道を通過し、太平洋へと進むルートを取る

大和 防空指揮所

「これだけの大艦隊が見れるのも、今日と明日でおしまいかな」
伊藤長官がつぶやく

大和を中心とした輪形陣で、
大和の後方に空母二隻、その外周を重巡二隻と二水戦が囲み
三十一戦がその外側を警戒している


「えぇ、空母はいますが、艦載機の性能は低いし、それ以前に潜水艦にやられかねません」
有賀艦長が答える

「全艦へ対潜見張りを厳とせよ」





2020分 都井岬沖三十浬の地点で米潜水艦スレッドフィンとハックルバックが
第一遊撃艦隊を捕捉
中途半端な損害によって退避する事を恐れた米軍は
魚雷の発射を禁止する命令を出していたが
2032分 ハックルバックが艦隊の左前方を航行中の青葉を狙い、
21インチ魚雷8発を2度に分けて発射した
魚雷が距離5000まで近づいた時に青葉見張員が雷跡を捕捉
急速転舵を行いこれを回避
艦隊の各艦にも通報しようとするが、無線封止中のため
発光信号で伝達
そのため艦隊の回避行動が遅れ
大和の艦首部付近に3発
日向、葛城の左舷中央部に各1発が命中した
大和は2000t 日向は2800t、葛城は1200tの浸水を起こした

雷跡発見後、涼月、磯風、槇が魚雷投射予測地点へ向けて爆雷を投射
爆雷の爆発後、木片や重油が浮かび上がってきたため、
撃沈確実とした
実際にハックルバックは爆雷により艦尾耐圧核が破砕
多量の浸水を受け、沈没
乗組員全員が戦死した

「大和、出し得る速力は」

「艦首部球状艦首部に1発命中していて完全に破壊され、
 浸水多量で艦首が沈み、出し得る速力24節です 傾斜は注水1000tで0度」

「日向、葛城は」

「日向は浸水多量にて出し得る速力20節 左舷傾斜8度
 葛城は左罐室4基中2基故障 速力27節 左舷傾斜3度」

「…………日向が足を引っ張る形になるか」

「レイテまでなら駆逐艦を護衛につけて帰らせるという手もできたが
 この艦隊では無理よのぅ」

「お言葉ですが、長官 沖縄はどちらにせよすぐに落ちるでしょう
 でしたら、この傷をおって速力の出ぬ艦隊をこのまま沖縄に進めるのではなく、
 一度佐世保へゆき、日向をおいて米軍の本土上陸を防ごうというのはどうでしょうか」


「………………有賀艦長、それをすれば私はどうなると思う」

「平時であれば左遷でしょうな ですが、今は長官以外に
 艦隊指揮を任せられる方がいないのも現状 このままとどめおかれるでしょう」

「そうだな………… 全艦へ通達せよ
 艦隊ハ反転シ佐世保ヘト向ヒ日向ヲ修理
 米軍本土上陸時二艦隊ノ全力ヲ持ッテ之ヲ撃滅セントス 之ハ長官命令デアル」

「了解しました 各艦に伝えよ!」

「はっ!」


突然の作戦中止にほとんどの艦の乗組員たちは驚いた
「まだまだ戦えるのに」
安堵したのは葛城と日向乗組員くらいだった



艦隊がゆっくりと舵を取り
北方へ向かう


「艦長!気象観測所より緊急電!」

「なんだ」

「大型の熱帯低気圧が急速に発達し、九州西方で大嵐をもたらす可能性があるとのことです」

「そうか、駆逐艦には警戒を呼びかけろ 友鶴事件のようにならんようにとな」



しかし、そこまでの大荒れとはならず
駆逐艦でも最大瞬間傾斜8度ほどだった
しかし、大和艦橋から遠方に海竜巻が観測されるなど、かなり海は荒れていた


4/7日 0600分 起床ラッパがなり
乗組員たちが出てくる
その時だった


大和 防空指揮所

「艦長!!!対空電探に飛行中の物体捕捉!!!方位10時方向!」

「そっちの方向から向かってくる味方機なんてないはずだぞ!総員戦闘配置!!!!
 全艦に通達!10時方向から敵機!一航戦戦闘機隊は発進せよ!!!」


パッパパッパパッパパッパパッパパパー!!!
対空戦闘ラッパが鳴り響く

直掩の零戦隊が10時方向に向かうのが見えた
とほぼ同時刻に鳴り響いてくる轟音

ゴォォォォォオオオオオオ

「なんだ!?!?!?」

「捕捉!!!10時方向高度3000!!!!!高速で突っ込んで…いや、爆弾を分離!!!
 おそらく目標!!!葛城!!!」

「機銃分隊撃ちーかーた始めぇ!!!」

ババババババババ ドム ドム ドム ドム




ズゴォォォォォォという轟音を響かせながら飛ぶ爆弾は
高度を下げつつあったのが急上昇し
葛城の飛行甲板に着弾 貫通には至らず甲板状で炸裂した
ドォォォォン

「葛城被弾!!!」

幸い、甲板上には艦載機はなく
格納庫までは貫通しなかったため
すぐに消火できそうだ

「にしても、あの機体は一体……?」

「有賀くん あの機体はプロペラがなかったね」

「えぇ、、、桜花の通常飛行版のようにも見えますよね形状的には」

「まぁ、良い、佐世保に帰ったら軍令部に新型兵器として報告だな」



1時間後


0745 佐世保港外

一同「一体、、、ここはどこなんだ………?」

そこにあったのは米国旗を掲げる大きな艦橋をもつ空母二隻と
帝国海軍旗を掲げる砲が一門しかない巡洋艦クラスの艦艇多数だった