◇
教室中に、浮かれた解放感が広がっている。顔には出さないが、朔斗の心も軽くはずんでいる。
(期末の結果なんて、もはやどうでもよくなってきた。夏休みの予定立てなきゃな)
ざわめく教室に向かって、担任がうんざりした顔で話し始める。
「はい、静かにー……。えー、みなさん、終業式お疲れさまでした。明日から夏休みになります」
「イェーイ!」
生徒たちが口々に喜びの声をあげる。その余韻はざわざわと残る。
「はいはい、聞きなさーい。夏休みになるんですけれども、たくさん楽しい予定を入れるのは大いに結構ですが、ハメを外しすぎないように! 制服を着ていなくてもこの学校の生徒であり、どこにいてもこの学校を代表するってことを忘れないようにね!」
担任は聞き飽きた文句を流れ作業のようにこなし、連絡事項を話していく。
「それと、夏休み中に文化祭の準備がある班は、前に計画を立てていると思うので、それに沿って、忘れずに準備を進めておいてくださいねー。放ったらかしちゃって、のちのち困るのは自分たちですからねー」
(家に帰ったらまず何しよう? アイス食べてーな。家に何があったっけ)
朔斗は担任の話を半分くらい聞き流していたが、ふと視線を感じた方向を見ると、奏太と目が合った。奏太も目が合ったことに気づき、にこっと朔斗に笑いかける。自分だけに向けられた明るさにどぎまぎして、朔斗は曖昧に微笑み返し、目を逸らした。
(やっぱり、眩しい)
もう一度そっと視線を向ける。奏太はもう別の生徒と会話を始めていた。
(さっきまで俺と目が合ってたのに……)
頭をよぎった一抹の寂しさを振り払い、担任の言葉に集中してみる。
「言われても聞かないだろうけど、宿題も計画的に進めてくださいねー。はい、じゃあホームルーム終わりまーす」
「きりーつ」
日直の気の抜けた号令に、立ち上がる。
「れーい。ありがとうございましたー」
一斉にばらばらの動きを始める生徒たちにまぎれ、奏太の席を見る。奏太は配布されたプリントと筆箱をかばんにしまおうとしている。
しばらく見つめていても、もう目が合うことはなかった。
教室中に、浮かれた解放感が広がっている。顔には出さないが、朔斗の心も軽くはずんでいる。
(期末の結果なんて、もはやどうでもよくなってきた。夏休みの予定立てなきゃな)
ざわめく教室に向かって、担任がうんざりした顔で話し始める。
「はい、静かにー……。えー、みなさん、終業式お疲れさまでした。明日から夏休みになります」
「イェーイ!」
生徒たちが口々に喜びの声をあげる。その余韻はざわざわと残る。
「はいはい、聞きなさーい。夏休みになるんですけれども、たくさん楽しい予定を入れるのは大いに結構ですが、ハメを外しすぎないように! 制服を着ていなくてもこの学校の生徒であり、どこにいてもこの学校を代表するってことを忘れないようにね!」
担任は聞き飽きた文句を流れ作業のようにこなし、連絡事項を話していく。
「それと、夏休み中に文化祭の準備がある班は、前に計画を立てていると思うので、それに沿って、忘れずに準備を進めておいてくださいねー。放ったらかしちゃって、のちのち困るのは自分たちですからねー」
(家に帰ったらまず何しよう? アイス食べてーな。家に何があったっけ)
朔斗は担任の話を半分くらい聞き流していたが、ふと視線を感じた方向を見ると、奏太と目が合った。奏太も目が合ったことに気づき、にこっと朔斗に笑いかける。自分だけに向けられた明るさにどぎまぎして、朔斗は曖昧に微笑み返し、目を逸らした。
(やっぱり、眩しい)
もう一度そっと視線を向ける。奏太はもう別の生徒と会話を始めていた。
(さっきまで俺と目が合ってたのに……)
頭をよぎった一抹の寂しさを振り払い、担任の言葉に集中してみる。
「言われても聞かないだろうけど、宿題も計画的に進めてくださいねー。はい、じゃあホームルーム終わりまーす」
「きりーつ」
日直の気の抜けた号令に、立ち上がる。
「れーい。ありがとうございましたー」
一斉にばらばらの動きを始める生徒たちにまぎれ、奏太の席を見る。奏太は配布されたプリントと筆箱をかばんにしまおうとしている。
しばらく見つめていても、もう目が合うことはなかった。