高校に入って初めての中間テストは、まずまずの滑り出し──になるはずだったが、数学が足を引っ張っていた。
(なんだよ、66点って! なんか低いし、微妙に不吉だし!)
 休み時間まで嫌な気分を引きずりながら、清水、中村のいつものメンバーが集まっている奏太の席へ向かう。清水がこちらに気づき、手を振る。朔斗も手を振り返し、微妙な点数を笑ってもらおうと話しかける。
「なぁ、俺、数学66点だったんだけど。ちょっと低くね?」
 手を振っていた友人は、大げさにショックを受けた顔をした。
「おい、朔斗! 47点だった俺の前でそれはない!」
「え、そうなの? それはごめん」
 中村がにやりとしながら口を開く。
「てか、朔斗って数学苦手なの? その見た目で? 意外だな」
「その見た目でって、どの見た目だよ」
「その、真面目そうで、勉強できそうな顔だよ」
「なんだそれ!」
「はははっ、ごめんごめん。まっ、誰にでもニガテなことはあるよな!」
「いや、だから、47だった俺の前でそういうこと言うなって!」
 他愛ない会話が続き、お互いをからかい合う。奏太はこちらを見上げながらけらけら笑っている。
「奏太は? 何点だった?」
「え? えっとね──」
 中村が奏太の言葉を遮る。
「朔斗、聞いて驚け。奏太、82点だってさ」
「え、まじ? 数学得意なの? すごい」
「だよな!」
「ははん! すげえだろ。ま、たまたまだけど」
 清水が奏太の肩に腕を回す。
「期末の時には奏太に頼ろっかなー」
 中村がからかうように清水に言う。
「おい! 今の時点で47点取ってるようじゃ、期末直前になってから奏太に聞いても間に合わねえぞ!」
「うるせぇな!」
 ふざける2人を横目に、朔斗は奏太に話しかける。
「じゃあさ、今度、授業で分かんなかったとこあったら聞いてもいい?」
「うん! いいぜ!」
 奏太は表裏のなさそうな笑顔を見せ、二つ返事で答えた。