「そんなことをしたら、奈々さんや純さんのご両親に申し訳ないもの。純さんは置き去りにされたって言ったけど、奈々さんも好きで純さんの元から離れていった訳じゃなしでしょう。別れたくなかったけど仕方がなかったのよ。それは私も同じ」
 真澄は例えようもないほど美しい笑みを浮かべると、幼い子供に言って聞かせるように優しく僕に語り掛けた。
「純さんには純さんを必要としている人がたくさんいるでしょう。だから、純さんを一緒に連れていくことなんか絶対にできないわ」
 真澄はもう触れることのできない僕の頬に手を当てた。真澄の手の温もり感じられなかったが真澄の思いは嫌というほど伝わってきた。
「ねえ、純さん。私と一緒に行きたいなんて言わないで。純さんがそんな風だったら、私、安心して成仏できないわ。私が安心して旅立てるように笑顔で見送ってくれないかな?」