真澄はとても明るい笑顔で答えたが、つい先日着たばかりの浴衣をまた着ようと思った真澄の気持ちが何に由来するのか分らなかった。
 僕がリュックを下ろして部屋着に着替えようとしていると、キッチンから真澄の声がした。
「純さんも浴衣になってね。この前の花火大会、とても楽しかったから。もう一度やろうと思って」
「花火が上がらないんだから、花火大会のしようがないじゃないか」
 真澄の提案にはさすがに少し腰が引けた。
「まあ、そうだけど。浴衣着て、ちょっと気分だけでも味わいたいの」
 正直僕は乗り気ではなかったが真澄の勢いに負けた。
「まあ、そういうことなら付き合うよ」
「ありがとう。ああ、夕食はもうレンジで温め直すだけになってるから、純さんはこの前みたいにガラス戸の前に席を設けてくれるかな?」
「いいよ」
 そう答えてから、僕は押入れから前に使った冬物の洋服用のケースを取り出して前回同様にガラス戸の前に置いた。座布団も二枚並べた後で試しに腰を下ろしてみた。