八月二十五日(火)

 その日、台風は熊本に上陸して大きな被害が出ていた。東京は曇りで最高気温は二十二度までしか上がらなかった。台風が連れ去る前に夏はもう早々に逃げてしまったかのようだった。
 
 夕方帰宅すると、真澄は浴衣に着替えていた。
「どうしたの、浴衣なんか着て?」
 僕が尋ねると真澄は照れ臭そうに笑った。
「うん、せっかく買ってもらったのに、まだ一度しか着ていないから、もったいない気がして」
「そうか、うん、良いよ。とても奇麗だ」
 真澄の浴衣姿はやはり奇麗で僕の言葉はお世辞ではなく本音だった。
「ありがとう」