「でも、信じてね。私は本当に幸せなの。可哀そうだなんて思わないでね。純さんと出会った時、私はもう死んでたんだから。生きている人が亡くなることは不幸なことかもしれないけど、死んだ人間が成仏できることは幸せなことなのよ」
 僕は真澄の顔が見られなくなった。俯いて何も言えずにいると真澄が優しい言葉を掛けてくれた。
「純さん、悲しまないで。私は今、とても幸せだから。それに、まだ少しだけど時間があるから。だから、旅立ちの時が来るまで今まで通り一緒にいてほしいの。少しずつ一緒にできることは減ってゆくと思うけどね。でも、まだ触れ合える。触れ合えなくなっても微笑み合える。姿が見えなくなっても歌は一緒に歌えるわ」
 とてつもない無力感が僕を襲った。そして、それはそのまま言葉になった。
「真澄、僕は、これからどうすればいいんだ?僕は、これから君のために何をしてあげられるんだ?」