真澄は微かな笑みを浮かべると、僕の怒りを鎮めるように柔らかな答えを返した。
「純さん、それは違うわ。地縛霊が成仏できるってことはとても幸せなことなの。私は長い苦しみからやっと解放されて次の世界に旅立てるの。だから、ひどい目に合う訳じゃないのよ。私は幸せになるのよ」
「僕と別れることが真澄にとって幸せだってことなのか?」
 言った直後、僕は自分を殴り倒したくなった。真澄は申し訳なさそうに次の言葉を紡いだ。
「違うわ。どうか、それとこれを一緒にしないで。私も、できることなら純さんとずっと一緒にいたい。でも、私の意志ではどうすることもできないの」
「本当にどうしようもないのか?」
 まだそんな言葉を吐いている自分が惨めだったが僕は聞かずにはいられなかった。
「無理みたい。でも、皮肉なものね。純さんに出会って幸せになれたから、お別れしなければならないって」
 僕が何も言えないでいると真澄は次の言葉をつないだ。