八月二十三日(日)

 夕食の片付けが終わると、真澄は食卓の椅子に腰を下ろし神妙な顔で僕に言った。
「純さん、実は、お話があるんです」
 その言葉を僕は前の晩から予期していた。最後の花火が上がる前に言いかけたことを言おうとしているのだと僕は確信していた。良い話ではないのだろうと僕は覚悟を決めて真澄の向かいに座った。僕を前にして真澄は一瞬ためらったように見えたが意を決したように話し始めた。
「純さん、私、もう長くは、ここにいられないみたいなの」 
 僕は激しく動揺した。だから、次の言葉は真澄を問い詰めるような口調になってしまった。
「それってどういうこと?」
「どうやら私、成仏してしまうみたいなの」
 真澄は自分でもまだ確信を持ち切れていないようだった。
「成仏って?」
「私、地縛が解けて次の世界に旅立てるようになったみたいなの」
 真澄の不確かなことを語る口調に変わりはなかった。
「どうして地縛が解けたの?」
「たぶん、純さんに出会ってこの世で幸せになれたからだと思う」
 推測を語る真澄の表情は苦しそうでもあり、また、僕への感謝を伝えたいようにも見えた。
「留まることはできないの?」