「あんな急ごしらえのものを褒められると恥ずかしくなるよ」
 今ならばもっと良いものが作れそうな気がした。真澄が喜ぶのならば九曲全てのビデオを作っても良いと思った。
「でも、やっぱり一番感動したのは指輪をもらった時かな」
 真澄は左手を顔の前に近づけると、手のひらを何度か裏表にしながらまじまじと指輪を見つめた。
「そんな安物でそこまで喜ばれると申し訳ない気分になるよ」
「ううん。大切なのは気持ちだから。どんなに高価な宝石でも気持ちがこもってなかったらただの石ころと一緒だから・・・なんてちょっとカッコつけすぎかな。売れば大金になるものね」
「そうだね」
 真澄は左手を下げると右手の親指と人差し指で指輪に触れた。指輪が確かにそこにあることを感じていたいような仕草だった。それから、真澄は何故だか奈々さんの話を持ち出してきた。
「奈々さんの話も、とても素敵だった。私も、そんな風にカッコ良い女になりたいと思ったわ。」
「欲張りだな。真澄は今のままではまだ満足できないの?」
「そんなことないよ。私は十分に幸せよ、十分過ぎるくらい」
「それならば良かった」