「恥ずかしいことになっても知りませんからね」
「その意気だよ、細かいことは気にせず楽しく踊ればいいさ」
私が反抗的にはっきりと言うと坂倉さんは苦笑して、気分を良くしたようだった。
厳密にいえば、ハイスクール時代にフォークダンスを踊ったことはある。
それもお遊戯程度に過ぎないただ音楽に合わせて身体を動くだけのもので、実際に何が正しいのか分からないで踊っていた。
「音楽に合わせて俺の動きに付いて来るといい。
後は雰囲気で乗り切ればいいさ」
陽気にいい加減なアドバイスを坂倉さんは言って、足取り軽く私をダンスに導いていく。
「どうして私なんですか……他にお相手はいくらでもいるでしょうに。
本命の涼子さんと踊らなくていいんですか? 付き合っているんでしょう?」
さっきの態度から考えて、涼子さんは浮かない表情をしてこっちを見ているかもしれないと思うと、複雑な心境だった。
「今年の一回生は君だけだ。他は二回生以上でここでダンスを踊った経験がある。初体験の相手を他の人間に任せるわけにはいかない。それに、君をスカウトしたのは俺だからな。責任を持って教える義務があるのさ」
「そうですか……これってやっぱり、この後他の男性とも踊らないといけないんですよね……」
「当然だろう、社交ダンスを申し込まれて理由もなく断るのは失礼にあたるぞ」
何とも言えない、憂鬱になる瞬間だった。
私には周りの人がどんな風に踊っているのか分からない。
辛うじて分かるのは、他の人の話し声と息遣いくらいで、確かに他の人も踊っているという空気感だけだ。自分が周りと比べ、まともに踊れているなんて自信が持てるわけがない。
坂倉さんを含め、誰と組んでも相手に迷惑を掛けることになるだろう。
そう考えると、ここでダンスを踊らされていることは意地悪をされているとしか普通は思えなかった。
「しかし、本音を言うなら俺は今日の打ち上げパーティーで君としか踊りたいと思っていない。君が他の男と踊っているところなど、見たいと思わないくらいだ」
不意打ちにもいきなり恥ずかしいことを言われ、赤面してしまう。
手を繋いで踊っている最中にそういうことを口にするのは反則だ。
気にしないようにしてもつい身体が意識してしまう。
どうしてそこまで坂倉さんが私に固執するのか、まったく理由が分からないが、こうしているのが愉快で楽しいと感じているのは本当なんだろう。
段々と身体の動きに慣れてきたところで曲が終わり、私は坂倉さんの手を放した。
そして、自分で席に帰れない状況の中、坂倉さんの話し通りに別の男性にダンスを申し込まれ、私はお辞儀をして手を伸ばし、手を繋いでダンスを踊った。
周りを気にしなければ楽しくなってくるダンス。
人それぞれ違う動きで誘導されるのは新鮮でドキドキして時間を忘れてダンスに集中してしまう自分がいた。
そして、三人目とペアを組んで踊りを踊っている最中、私は眩暈を覚えて動きが止まり、その場で倒れ意識を失った。
意識を失う瞬間、踊り相手が動揺しながら話しかけてくる声が聞こえた。
私は眩暈を感じて動きが止まった瞬間、反射的にごめんなさいと声を上げていたが、それ以上言葉を続けることは出来なかった。
「その意気だよ、細かいことは気にせず楽しく踊ればいいさ」
私が反抗的にはっきりと言うと坂倉さんは苦笑して、気分を良くしたようだった。
厳密にいえば、ハイスクール時代にフォークダンスを踊ったことはある。
それもお遊戯程度に過ぎないただ音楽に合わせて身体を動くだけのもので、実際に何が正しいのか分からないで踊っていた。
「音楽に合わせて俺の動きに付いて来るといい。
後は雰囲気で乗り切ればいいさ」
陽気にいい加減なアドバイスを坂倉さんは言って、足取り軽く私をダンスに導いていく。
「どうして私なんですか……他にお相手はいくらでもいるでしょうに。
本命の涼子さんと踊らなくていいんですか? 付き合っているんでしょう?」
さっきの態度から考えて、涼子さんは浮かない表情をしてこっちを見ているかもしれないと思うと、複雑な心境だった。
「今年の一回生は君だけだ。他は二回生以上でここでダンスを踊った経験がある。初体験の相手を他の人間に任せるわけにはいかない。それに、君をスカウトしたのは俺だからな。責任を持って教える義務があるのさ」
「そうですか……これってやっぱり、この後他の男性とも踊らないといけないんですよね……」
「当然だろう、社交ダンスを申し込まれて理由もなく断るのは失礼にあたるぞ」
何とも言えない、憂鬱になる瞬間だった。
私には周りの人がどんな風に踊っているのか分からない。
辛うじて分かるのは、他の人の話し声と息遣いくらいで、確かに他の人も踊っているという空気感だけだ。自分が周りと比べ、まともに踊れているなんて自信が持てるわけがない。
坂倉さんを含め、誰と組んでも相手に迷惑を掛けることになるだろう。
そう考えると、ここでダンスを踊らされていることは意地悪をされているとしか普通は思えなかった。
「しかし、本音を言うなら俺は今日の打ち上げパーティーで君としか踊りたいと思っていない。君が他の男と踊っているところなど、見たいと思わないくらいだ」
不意打ちにもいきなり恥ずかしいことを言われ、赤面してしまう。
手を繋いで踊っている最中にそういうことを口にするのは反則だ。
気にしないようにしてもつい身体が意識してしまう。
どうしてそこまで坂倉さんが私に固執するのか、まったく理由が分からないが、こうしているのが愉快で楽しいと感じているのは本当なんだろう。
段々と身体の動きに慣れてきたところで曲が終わり、私は坂倉さんの手を放した。
そして、自分で席に帰れない状況の中、坂倉さんの話し通りに別の男性にダンスを申し込まれ、私はお辞儀をして手を伸ばし、手を繋いでダンスを踊った。
周りを気にしなければ楽しくなってくるダンス。
人それぞれ違う動きで誘導されるのは新鮮でドキドキして時間を忘れてダンスに集中してしまう自分がいた。
そして、三人目とペアを組んで踊りを踊っている最中、私は眩暈を覚えて動きが止まり、その場で倒れ意識を失った。
意識を失う瞬間、踊り相手が動揺しながら話しかけてくる声が聞こえた。
私は眩暈を感じて動きが止まった瞬間、反射的にごめんなさいと声を上げていたが、それ以上言葉を続けることは出来なかった。