①物語の設定・主要キャラクターの説明。


・物語の世界観


ある日一枚の扉が現れ、精霊界と魔獣界と人間(魔法科学)界の三つの世界が繋がり、それから千年が経った世界が舞台。
その世界では宝が自然発生する。宝とは精神的な物ではなく、絶対に実物が存在する。
自然発生した宝は、最初にその宝を手にした者に所有権が認められる。手にすると、宝のどこかに超常的な力で名前が刻まれる。(偽名の場合は本名が刻まれる。改名していた場合は改名後の名前が刻まれる)
ここ数年は宝探しが盛んになり、三界を自由に行き来する冒険者たちが格段に増えた。そのせいで争いも増えたが、大きな戦争は起こっていない。概ねバランスが取れていて平和。

精霊界は手付かずの美しい自然が豊か。反面、危険な場所も多く存在し、助けが来ないことが多々ある。精霊たちは死の概念が薄く、縄張り意識が強いために他種の介入も難しく、ずっと対策がされていない。
精霊界に住む精霊たちは人間と見た目がほぼ変わらない者たちが多いが、見た目と年齢は一致しない。そして、必ず体のどこかが蜃気楼のようにゆらゆら揺れている。
精霊の中には世界が一つになる遥か以前から生きている者たちがいる。その精霊たちは太古の精霊と呼ばれ、現代の精霊たちとは次元の違う強い力を持つのだが、我が強く自由奔放であったり逆に他者と絶対に関わろうとしなかったりで社交性が無い。

魔獣界は雷雲渦巻く険しい山脈やおどろおどろしい暗黒の海などといった光景が広がる。そのような面を生かした自然エネルギー産業の開発が活発に進んでいる。エネルギーの輸出は需要が高く、急激な開発に戸惑う魔獣たちもいる。
魔獣界に住む魔獣たちは様々な見た目をしており、知能もてんで違う。全員に共通する点は戦闘力が高いこと。
三界が繋がってからは、人間に見た目が近い魔獣は獣人と呼ばれるようになった。
昔は大魔獣と呼ばれる現代の魔獣たちよりも遥かに強い個体がわんさかいたのだが、環境の変化と共に血は薄れ、それほどの力を持つ者は今はもういない。

人間界は常に夜。宇宙に恒星は存在しているのだが、かなり遠い上に弱々しく光が届かない。三界が繋がった今でも他の世界の太陽光は届かない。昔ながらの光源は巨大発光茸。今は擬似太陽灯が主流。
中世の見た目にスチームパンクを混ぜたかのような建物が並んでいる。医学と薬学が進んでいる。
残されている古い書物の記述から千年以上前は太陽が存在していたことが分かるのだが、なぜ消失してしまったのかは分かっていない。

「三つの世界が千年前に繋がった」という事象は実際そうなっている上に、三界が繋がる前から生きている太古の精霊たちの生きた証言や、それぞれの世界にある歴史の書物と記録物の内容などから疑いようも無い事実だが、肝心の扉がどこにあるのか誰も知らない。なので、扉の存在は今は半ば神話のようになっている。


・主要登場人物のキャラクター紹介。


イオ 【主人公】
宝の精霊と呼ばれるバンドレア族の男性。
人間年齢は16歳ほど。精霊の特徴で髪の毛の端がゆらゆらしている。
自分の住処に相応しい宝を探して世界を巡り宝探しをしている冒険者。一人っ子。
行動的だがぼんやりしている一面もあり、たまに心ここに在らずな時がある。
バンドレア族は取り憑いた宝を住処とし、住処を追い出されたり破壊されない限り一生守護するのだが、イオは宝を守ることに関心が無い。それどころか、ころころ住処を変える。なので同族から変人扱いされ、追放された上に宝石の中に封印されたことがある。その際は宝石の近くをたまたま通りかかったトリトに助けられた。
宝の精霊故に自然発生した宝の正確な位置が分かる。更に宝由来の呪いを受けない。ただし、それ以外の呪いは普通に適応される。宝由来の力を一時的に自分の力として使えるが、体のどこか一部でも宝に触れていることが条件。
通常は精霊の宝剣、『カベル』を使い戦う。

トリト・グウェン 【ヒロイン】
人間の女性。魔女であり鑑定士でもある。
年齢は19歳。切長の目の美人。常に黒いホットパンツ+タイツ姿。
鑑定士としての腕を磨き、自分の力を試したくて世界を行き来する冒険者。兄が一人いる。
ツンツンしがちだが暴力系ではない基本的には優しいお姉さん。イオとアグルの喧嘩の仲裁役もする。
鑑定士の証明である、翼を広げた梟が描かれた金のネックレスを常に身に付けている。
凄腕ドライバーで運転が酷く荒い。魔力をエネルギーとして空をも飛べる魔動車を運転し、愛車をルノワール・ウルフと呼んでいる。
実は両腕両脚に特別性の透明な魔術タトゥーが刻まれており、腕っぷしが強い。
魔法と呪いと薬学に精通している。攻撃、バフ、デバフ、ヒーリングなどなど結構なんでもできる。
イオと出会う前は別の冒険者一行に雇われていたが、宝の呪いを受けて自分以外が再起不能に。しかしビジネスライクの関係であったため未練は無く、これからどうしようかと悩んでいた先で宝石に封印されていたイオを助けた。そしてイオは宝由来の呪いを受けないと知り、同行することにした。

アグル・ダミュ 【仲間】
額にうねった二本の角が生え、下半身が魚の鱗に覆われているサティーヤ族の男性。
人間年齢は17歳ほど。
宝を得て売っては金に換え、その金を女性に貢いでいる冒険者。兄妹が数え切れない程にいる。親であるバーダライトとは仲が悪く、親元からは早々に離れた。
無類の女性好きで、ハニトラには絶対に引っかかるトラブルメイカー。一生懲りない。己の色欲に素直なアホだが女性好き故に無礼は働かない。
精霊の特徴である体の一部のゆらめきを幽霊のように感じ、不気味がっている。イオたちと出会い、それから仲間に加わった後はイオと喧嘩になる度に「悪霊」と吐き捨てる。
サティーヤ族は水中で息ができ、泳ぎも早く、その体は深海の水圧にも防護魔法無しで耐えられる。角は鉄塊に穴を開けられるほどに強靭で、水中ではアンテナ代わりにもなる上に、収納可能で短くすることができる。危機的状況が続くと山羊乳を胸から出せる。

ハッシー 【マスコットポジションの仲間】
鱗が羊のようにもこもこしている小さな水色の龍。見た目がぬいぐるみっぽいが海底遺跡で生まれた雷の宝そのもの。
人間年齢10歳ほどの知能を有する。宝なので性別は無い。
活発でなんにでも興味深々。しかし子ども扱いを嫌う。水が苦手。
雷の力を身に宿しており、体表と口から放電できる。暗闇の中では薄ら発光し、灯り代わりになる。
宝だが意思があり、イオたちと遺跡の崩壊から共に脱出した後に同行する。名前はイオから付けてもらった。元の名前は『八肢雷龍』。
本気モードになると大きな雷龍の姿になれるが、すぐにバテてしまう。

ラズマ 【情報屋】
風の精霊と呼ばれるギプ族の女性。
人間年齢で8歳ほどの見た目をしているが、ギプ族は風のように姿が定まっていない精霊なので、その日の気分で美女の姿になったりイケおばの姿になったりと形を自在に変えている。精霊の特徴で両腕の表面がゆらゆらしている。
三界を股にかけ、あらゆる情報を得ている情報屋。新聞に載る前の特ダネから危険な品物の取引事情までなんでもござれ。
その情報は確かだが、会得する過程でよくドジを踏む。しかし憎めない愛嬌がある。

ラゴラ・グウェン 【ヒロインの兄】
人間の男性。魔法使いであり考古学者でもある。
年齢は28歳。
博識でイオたちに協力してくれる善き大人。妹が一人いる。
最近は海底遺跡の調査に参加していた。

バーダライト・ダミュ 【敵のボス】
額に片方が折れているうねった太い二本の角が生え、下半身が魚の鱗に覆われているサティーヤ族の長。
外見の人間年齢は50代後半くらいに見えるが長生きで実年齢は不明。腹を痛めてアグル(とトライア)を産んだ母であり厳格な父でもある。
魔獣界の大物。もう誰が正妻だったのか思い出せないくらいに配偶者も愛人も子どもも大勢いる。アグルとは仲が悪い。
実は三界を元あった別々の時空へ分かとうと暗躍する組織のボス。魔獣は精霊側からは悪しき存在だと生きているだけで差別され、人間側からは病を運ぶ害獣として迫害される故に種族間の闇を憂い、魔獣界は他の世界から離れるべきだという考えを持つ。しかし、本当は別の理由がある。

トライア・ダミュ 【敵】
額に一本のまっすぐな角が生え、下半身が魚の鱗に覆われているサティーヤ族の突然変異の女性。
人間年齢は15歳ほど。
ユニコーンのような一本の角は常に虹色の光を帯び、魔力を放出している。魔法を使用でき、全体魔法を連発してくる攻撃派。
イオたちの周辺に度々現れては暗躍していた。アグルの恋人の振りをし、海底遺跡の宝の回収をさせようとしたこともある。
その正体は組織の一員であり、アグルの実の妹。アグルの兄妹は何人もいる上に、アグル自身は早々に親元を離れたのでトライアを妹だとは知らなかった。
トライアはアグルを実の兄だと知っているが、どうとも思っていない。
アグルと違い親子間の仲は良好。
アグルはバーダライトに対して父親の認識をし、トライアはバーダライトに対して母親の認識をしている。