さて後半の講義を始めるが、皆着席しているか。着席していない者は返事をしろ。前にも聞きました?勿論、生徒の緊張を和らげるあららぎ渾身の昭和ギャグは今日も絶好調だ。
いよいよ本題に入る。この801本、
「相模恭介がさまざまなシチュエーションの愛されクエストに立ち向かい総愛され主人公を目指す話」
には主人公相模恭介の愛されクエストが全部で3例記載されていたと思うが、本日は1例目、
「愛され主人公を目指す相模恭介が塾のアルバイトを始めたら人気イケメン講師に愛されクエスト発動!どうやったら愛されるか兄に相談しているうちになんと兄からの愛されクエストも解放してしまった!?」
を検証していく。
添付資料にもあったように、相模恭介、塾講師、相模恭介の兄がこの物語の軸となる。
第一回でも触れたが、1組目のカップリングの攻めキャラである塾講師は、細マッチョでイケメン、加えて頭が良いキャラクターという設定になっている。主人公との愛され展開が想像し易いからだ。
相模恭介はこれといった取柄のない主人公だが、そういったちょっと平凡な部分や朴訥とした彼の性格が、周囲にもてはやされてきた塾講師の疲れた心を癒すわけだ。勿論相模恭介自身にその自覚は無い。
出会いの場面では、塾の経営者から無茶ぶりをされ辟易としていた塾講師に、相模恭介がどう接近していくかがポイントだ。
皆のディスカッションの内容を読ませてもらったが、体格差を生かしながらもう少し積極的に狙ってもよいのでは、という意見が多かった。確かに実際の恋愛場面においてはある程度の駆け引き、あざとさといったものが必要になることもあるだろう。だがこの801本には、主人公相模恭介の純粋な想いが塾講師の心を動かすところに萌えがぎゅっと詰まっているのだ。無自覚愛されの相模恭介からアクションを起こさずに愛されを引き寄せる!これが私の目指す愛され哲学なのだ!!
──あ、いや。そういう見解もある、ということだ。
さて、塾講師が相模恭介の不器用な優しさに触れ、だんだんと心惹かれていく中、愛され修行中の相模恭介はイケメン塾講師から向けられる好意にうろたえてしまう。何せ愛されに慣れていないからな。
すれ違いざまの意味ありげな微笑み、自分だけに差し入れてくれるコーヒー、重たい資料を分担してくれる手、バイト終わりの待ち伏せ…。相模恭介はついに塾講師から映画に誘われる。差し出されたのは、前に行ってみたいと話したことのあるアクション映画のチケットだ。
ここで相模恭介は悩んでしまう。
(この映画はどう捉えたらいいんだろう)
単に行ってみたいと話したから親切で提案してくれたものなのか、それとも。
この悩みを相模恭介は大好きな兄に相談することにした。