「明日の便でアラブに帰国することになった、君も一緒に来てくれないか」

あと数日は余裕があると思っていた相模恭介は動揺する。石油王から告白され、食事の後に営業マンからも告白を受けた相模恭介は、それぞれの返事を保留していた。

彼らへの想いの間で揺れ動く相模恭介。

『教授、石油王ですよ?迷うところじゃなくないですか?』
君は主張がハッキリしているね。確かに経済的にも人格的にもゆとりがあり、相模恭介を大切にしてくれるのは石油王の方かもしれない。

だが、営業マンの行動を思い出してみてくれ。慣れないデートの誘い、ホビーショップへの真摯なフォローアップ、相模恭介に対するピュアな想い。不器用ながら真心のこもった姿勢は、石油王のそれとはまた違った愛のカタチであると、相模恭介は気づいたのだ。

「愛され」るためには、もっと「愛」を知らなければいけない。

BL世界の愛され主人公になるにはまだまだ修行が足りないと感じた相模恭介は、石油王の誘いを断る。けれど、このアキヴァでいつでも貴方が来るのを待っていると、そう笑顔で答えるのだ。その笑顔に同じく笑顔で了承する石油王。
そして営業マンの告白にも、まだ自分は「総愛され」に追いついていないからとかぶりを振る相模恭介。
いつか、本物の「愛され主人公」になる時まで。
相模恭介の返答に、営業マンも「いつまでも待っている」と頷くのであった。

『うッ…うッ…尊い』(教室中から嗚咽の声)

そうだな。この場面は書いていて私も泣けた。…と皇先生は仰っていた。(頑張るなあ、あららぎ教授)

さて、この801本での検証は相模恭介の「愛され」修行の途中で一応の結末を迎えたわけだが、ボーイミーツボーイの世界はまだまだ広い。我があららぎゼミでは、引き続きBL世界の探求に情熱を注いでいきたいと思っている。
今回初受講の1回生は、ぜひ来年以降もあららぎゼミに参加してほしい。今年の1回生はとても才能豊かな生徒が揃った。その才能をあららぎゼミで遺憾なく発揮してほしいと心から願っている。
また2回生以上の生徒達は、1回生のフレッシュな才能に負けず、更なるBLスキルを磨いてほしいと思っている。

(教室内より大きな拍手)

ありがとう。ありがとう。
私もそして皇先生も、決して驕ることなくBLの道を邁進していく所存だ。相模恭介とともに愛されBL主人公を目指していこうではないか。

(もう一度大きな拍手。松木さんがバラの花束を贈呈)

ご清聴ありがとう。

それでは蘭一真(あららぎ かずま)の愛され講座、これにて閉講。質問等あれば研究室まで来るように。