さて後半の講義を始めるが、皆着席しているか。着席していない者は返事をしろ。
『教授、それは昭和ギャグというやつでは』
そうだ、昭和ギャグだ。それがどうかしたか。

さて後半は、先ほど配布した801本の黙読から始めてもらう。2回生以上もしくは801本の購入経験者の生徒は、初参加の生徒を補助するように。初参加の生徒は、用語など不明点があれば経験者に聞きなさい。分からないことを分からないままにしておくのは研究者として一番よろしくない。もちろん私にもどんどん質問してくれ。
休憩前に説明した通り、黙読後グループディスカッションに入るから、机を移動させてくれ。ああ、4人一組だ。各グループに必ず一人上級生の男子が入るように。え?ああ、今回はまだタチでもネコでもどちらでも良い。次の講義で適正テストを行うからその時にポジションを決めていこう。……?どうした先ほどの初受講の生徒だね?なに、質問?

ほう、タチとネコとは何か?
そうだな、そこはBLの基本中の基本だ。先に説明しておこう。

BL界では登場するボーイ達の属性というものが大きく分けて2種類ある。ボーイがラブするからにはそこに何らかの接触が描かれる。
ああいや、なにも身体的接触に限ったことではない。精神的な繋がりも含めての話だ。ラブをリードする側、俗世間的に言えば愛する側、抱く側。こちらをタチ、と呼ぶ。攻め、左、と表記することもあるが、それについてはいずれ時間があれば説明しよう。前回の「愛する講座」を受講した者は資料を読み直しておくように。

そしてネコというのは、愛される側、抱かれる側。受けや右、などとも呼ばれる。今回の講座では主にこちらのネコ男子を観察対象としている。細分化すればもっと多くの属性が存在するのだが、すべて講義すると長くなるので割愛する。
これから目を通してもらう801本の主人公、相模恭介はBL界で言うところのネコ、いわゆる受けの男子大学生だ。もっとも今回は「受け」描写には触れず、難易度高めの「総愛され」というポジションを目指していく。

そう、この資料にはボーイにラブされたい男子の日常が描かれている。15分ほどで読み切れる筈だ。その点を踏まえながら資料を開いて。はい、スタート。