さて場面は変わり、相模恭介の勤務するホビーショップでの一コマ。

クレーンゲーム用の景品を売り込みに来た営業マンは、今日も商品の買取を断られ意気消沈して店舗から出て行くところであった。売れ筋の商品は、生え抜きの営業マンが根こそぎ持っていってしまう。彼の売るものと言えば、人気のないアニメのグッズか、小さい子供しか食いつきそうもない教育番組のキャラクターぬいぐるみくらいだ。アキヴァでは残念ながらお呼びが掛からない。

もっと流行りのグッズなら俺だって営業成績くらい上げられるのに、とヤケになり、ショップの表にあるガチャカプセル用のごみ箱をつい蹴飛ばしてしまう。案の定、丸い空カプセルが辺りに散乱。

ほんとツイてない…としゃがみ込んだその時。
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
心配そうに声を掛けたのが、ショップの店員である相模恭介だった。カプセルを拾うのを手伝った相模恭介は、営業マンの持っていた紙袋から「みやびちゃん」ぬいが顔を出しているのに気がつく。
営業マンの勤める会社では「アイドルファンタジー」の販売権利を持っており、話のネタに必ずひとつは持参するのだが、実際この営業マンが売り込みを掛けられる訳ではなかった。

愚痴まじりにその話を聞いた相模恭介は、ある事を思いつく。そう、石油王に頼んでこの営業マンから「みやびちゃん」ぬいを買い取ってもらうのだ。
もちろん石油王は一二もなくその話を引き受ける。ホビーショップと営業マンとの契約は無事成立。本心から契約を喜ぶ相模恭介の姿を見て、営業マンの心に愛おしさが生まれるのである。

お礼に、と食事に誘われる相模恭介。
流行りの店❁ふらわー❁は予約が取りづらいことで有名だ。このひとはどうやって予約してくれたんだろう。一生懸命喜ばせようとしている姿に、相模恭介の心はキュンとなる。

その晩、石油王から相模恭介の元に電話が入った。