さて後半の講義を始めるが、皆着席しているか。着席していない者は返事をしろ「はい」なんと、あららぎ渾身のギャグに切り返す生徒が現れたようだな。実に素晴らしい。
冷静な判断、緻密な分析。そして時にフレキシブルなマインド。これぞ我があららぎゼミに必要な能力のひとつであり、この講座を受講した成果だと言えよう。

そんな君達だからこそ、この3例目も今まで学んできた愛されスキルを存分に発揮して読み込んで欲しいと思う。

さて、今回の相模恭介の設定はアキヴァのホビーショップ店員だ。普通に生活していればおよそ出逢いそうにない人物を助けるところから物語は始まる。

アラブのとある小国より一人の王子が来日した。自国の石油ルート開拓を一手に行うやり手の王子だ。表向きは民間商社の社長ということになっているが、物々しいSPに囲まれ、日本のカルチャー特にオタクと呼ばれる文化に興味があるなどと口にする隙も無い。なんとかしてアニメ「アイドルファンタジー」の限定フィギュア「みやびちゃん」を手に入れたいと、SPの目を盗んでお忍びでアキヴァへとやって来たはいいものの、怪しげなパーツ市場へと迷い込んでしまった。

二次元でしか見たことのない高身長褐色イケメンが三次元となって現れた!とアキヴァは一気にどよめいた。オタク達に囲まれて右往左往しているところを、これからホビーショップに出勤するところだった相模恭介が機転を利かせて助けてやるのだった。

「お兄さん、日本語喋れますか?」
「すこしナラ」
ラブロマンスの始まる予感だ。

「この出逢いの場面、めちゃくちゃ萌えました!」
そうだな。私も相模恭介の優しさに石油王が一目ぼれをする重要な場面が上手く書けたと思う…ああ、いやいや。そう皇先生が仰っていたのだがね。

(もう隠さなくてもいいのに、と生徒全員が心の中で呟く)

相模恭介のおかげで「みやびちゃん」を入手出来た石油王は、買い物やイベント参戦に付き合ってもらいたい、と相模恭介に依頼をする。同人イベントやコスプレ大会、メイドカフェ…日本のカルチャーを存分に味わってもらいたいと石油王をいろんな場所に案内するうちに、相模恭介の方も石油王の人柄の良さに触れ、ほんのりと恋心を覚えるのであった。

だが、石油王が日本を離れる日まであと数日。

欲しかったものは手に入れた石油王だが、一番欲しいものが手に入っていない、という事に気がついた。そう、「相模恭介の心」だ。