(自販機の前。1回生の例の2人)

「何お前、昨日ケガしたって?大丈夫?」
「や、ちょっとすっ転んだだけ。先輩が家まで送ってくれたし」
「は?なんで俺にラインして来ないんだよ、送ってってやったのに」
「いや別に送ってもらうほどのことでもなかったし」
「だって、先輩に送ってもらったんだろ?」
「いいって言ったんだよ、先輩には。でもなんかすげー心配されちゃってさ。今朝も迎えに来るって言われたけどさすがに断ったわ」
「え、おま、その先輩もしかしてお前のこと、」

「へ?」
「あ、いやなんでもねえよ」
「医務室の先生も至れり尽くせりでさぁ。オレそんなやわじゃないっつーの」
──ほう。
「校務の人もなんだか慌てて駆けつけてきてくれたな、病院に行くなら手配しますって」
──ほう?
「あ、そうそう。今朝なんか構内コンビニのお兄さんにオゴリだっつって肉まん1個もらったわラッキー」
──お前の周りマジ油断なんねえな…。
(よくある攻めの独白調で読んでください)

「ん?なんか言ったか?」
「いや、今日は俺んちの車に乗って帰れよ。どうせ帰り道だしさ、お前んち」
「西園寺グループの会長の息子なんかに送ってもらったら申し訳ねーわ」
──家の事よりお前の方が大事だよ
(よくある攻めの独白調で読んでください)

「なんだよ、さっきから」
「あ、いや何でもねーよ。今日は最後まで授業受けてくん?」
「ああ、あららぎゼミ今日で最後だしな」
「そっか。で、やっぱり来年もあららぎゼミにすんの?」
「うーん、まだ理解できない部分とか多いんだけど、もしかしたら自分に向いてる分野なんじゃないかなって」
「そっかぁ。じゃあ次は俺も頑張ってあららぎゼミ受講してみよっかな」
「おう、そうしろよ。お前と同じゼミなら話も盛り上がるしさ」
「そだな」

2人の会話が終わりそうになり、観葉植物を両手に持ってカモフラージュしているあららぎ教授、自販機の隙間から覗いていた勅使河原先生、掃除のおばちゃんの格好をしている松木安子は慌てて定位置に戻る。

「じゃな、西園寺」
「おう、あとで昼メシ一緒に食おーぜ」
「りょー」

(なるほど、御曹司攻めか。来年は彼も受講生リストに載せよう)
(校医と先輩と同級生と彼とで4Pか…、いいな)
(これは絶対すめらぎ先生の新刊に入ること間違いなし!)
(思ってた以上に愛され包囲網ヤベぇことになってた…)

それぞれの思惑をよそに、休憩時間は過ぎて行く。