はい、静かに。講義を始める。

蘭一真(あららぎ かずま)の愛され講座も、今日で最終回となる。今回は私にとっても特に実りのある講義となった。愛されBLとは何か、改めて考える良い機会となった。皇先生からもお礼のメッセージが来ている。次回の新刊をお楽しみに、との事だ。

(喜ぶ生徒達)

静かに、静かに。
最後の講義とはいえ、手抜きは一切ないぞ。ディスカッショングループでも一番意見の交わされた3例目についてしっかり検証していこう。タイトルは「愛され主人公を目指す相模恭介がアラブの石油王から永遠の愛と富を約束される!だが、そっと彼の幸せを見守る冴えないサラリーマンの姿に気が付いた相模恭介は」だ。

3例目のカップリング、「石油王×相模恭介」、「サラリーマン×相模恭介」では、いわゆる解釈違いという現象がどのグループでも起きていたようだ。念のため説明しておくが、解釈違いというのは、キャラクターの見解や行動、性格などに対する解釈が受け取る側によって違うことである。
今回は「総愛され」を前提とした主人公についてディスカッションするのが目的であるから、そもそも解釈違いなど起きない筈なのだが、3例目に関しては意見が分かれたようだ。

何はともあれ資料の3ページ目を開いてくれ。

前回伝えた通り、3例目は、石油王、サラリーマン、そして相模京介だ。この3例目に関して皆からはこのような意見が上がった。
「石油王はいくらなんでもカップリングとしては非現実的だろう」
「むしろ男前な相模君より、サラリーマンの方が愛され解釈…!」
「ここまで差があると、さすがに比較にはならないのでは?」

うむ、なかなか切れ味の鋭いコメントだ。

富も美もあり、相模恭介を人一倍愛している石油王と、金は無く取柄も少ない、むしろ相模恭介に頼りっぱなしのヘタレなサラリーマン。確かにこの回ではサラリーマンの分が悪いようにも見える。

さてそこをどうやって料理するかが、蘭一真(あららぎ かずま)の「愛され」術の見せ所だ。
トイレ休憩ののち、検証を行っていこう。

休憩。