今日の講義は少々短いがここまで。
次回、最終科目である3例目、「愛され主人公を目指す相模恭介がアラブの石油王から永遠の愛と富を約束される!だが、そっと彼の幸せを見守る冴えないサラリーマンの姿に気が付いた相模恭介は」
を復習しておくように。蘭一真(あららぎ かずま)の愛され講座、第三回はこれにて閉講。質問等あれば研究室まで来るように。
────────────────
(医務室へ急ぐあららぎ教授。バン、とドアを開けると…)
「校医の勅使河原先生、彼に何を…?」
「わッ、蘭教授!いや、呼吸がしやすいようにと彼のシャツのボタンを少し」
「…何やら怪しい動きに見えましたが、まあそういう事にしておきましょう。彼の様子はどうでしょうか」
「ええ、先ほどまで2回生の生徒と元気に会話していましたが、少し疲れてしまったようで、今は寝ています。2回生の生徒は自宅に送る準備をしてくると、席を外していますよ」
「なるほど。寝ている隙を狙った、と。勅使河原先生も油断なりませんな」
「そういう蘭教授も随分と慌てて来られた様子。講義の方は終わったのですか?」
「ええ、少々巻きで行いましたが。途中で新作のネタを思いついてしまいましてね、気が気じゃありませんでした」
「なんですって?皇先生の新作ネタ!?それは楽しみです」
「勅使河原先生、いつも新刊を予約してくださり有難うございます。他ならぬ同じ勤務先のよしみで、差し上げてもよろしいのに」
「いえいえ!それはなりません。推し作家様の作品は、課金してこそ。皇先生の新刊を買うためにATMに走る時ほど幸せな瞬間はありません!」
「そう言っていただけると、皇和葉冥利に尽きます。ですが、この事はくれぐれも内密に」
「分かっています。蘭教授が皇和葉である事は、誰にも言っていませんよ(皆知ってますけど)」
「なら安心です。では、2回生が戻ってくるまで、私もここで様子を見守っていましょう」
「ええ…帰ってくださってもいいのに…」