――陽向くんのクラスメイトと先輩が手を繋いでいて、羨ましかった。

 ふたりをじっと見ていたら、陽向くんが僕の手をぎゅっと握ってきた。

 ドキドキが溢れてきて、また倒れそうになったし、どうすればいいのか分からなくなって、頭がパニックになった。陽向くんは何も謝ることはないのに……謝りながら手を離してきた時に、きちんと伝えたかった。

「謝らなくてもいいよ。だって、僕も手を繋ぎたかったんだから」って。

 離れないように、僕もぎゅってすれば良かったな。

 僕たちは手を離してから、建物の二階にあるレストランへ行くと、窓がわの席に案内された。この席は花畑のグラデーションが綺麗に見える。ランチセットを注文すると花畑が背景になるように、羊毛フェルトの陽向くんと僕を窓のところに置き、手を繋がせて並べた。そしてカメラとスマホで写真を撮った。

 写真はとても良い感じに撮れた。
 
 カメラとスマホの画面を眺め、今日撮った写真をひとつひとつ確認していると、ランチセットが来た。ランチセットは、ハンバーグやエビフライ、そして唐揚げとポテトサラダ。ミニオムライスにたまごスープだった。僕の好きなものばかりだ。

 記念に、お昼ご飯と持ってきた羊毛フェルトのキャラ全員を並べて一緒に撮った。そして羊毛フェルトの陽向くんと僕以外をバッグに入れる。出したままのふたりは「外の景色を楽しんでいてね」と声をかけて窓に置き、視線を外に向けた。

 そういえば、注文してからずっと陽向くんの声を聞いていない。

ちらっと陽向くんを見ると「叶人に聞きたいことがあるんだけど、いい?」と真面目な顔して言ってきた。陽向くんが真面目な顔をして何かを言ってくる時も、最近陽向くんに対してしているようなドキドキとは違うドキドキがする。

「僕が答えられることなら、何でも答えるよ」と僕は返事をした。