食事会の会場は、オフィスビルが立ち並ぶビルの中にある隠れ家的な料亭という感じだった。
入り口はお店を知っている人しか見つけられない、オフィスビルの裏側にある専用エレベーターに乗ってしか入れない。
専用エレベーターが開くと、40代後半位の品の良い女性が待っており
「お待ちしておりました」
と言うと、木の上がり框に靴を脱いで上がるように言われる。
「靴はそのままで結構です」
そう言われて、広い廊下を案内の女性に連れられて着いて行く。
廊下の先に部屋が一つだけあり、閉まっている襖から母さんの笑い声が聞こえて来た。
俺の後ろを歩いていた田中さんに
「あの……他に部屋は?」
と聞くと
「このお店は、限定2組だけのお店なのですよ。入口が別々になっておりますので、他のお客様と通路で会う事もありませんよ」
そう言われて
(お高いお店!!)
と、卒倒しそうになる。
「社長が、気兼ねなく会話して欲しいと配慮なさっての事ですので、気になさらないで下さい」
笑顔で言われ、(社長?)と首を傾げる。
もしかして、田中さんは母さんの再婚相手では無いのかもしれないと思ったその時
「失礼致します。お連れ様が到着なさいました」
女性の声にハッと我に返る。
ゆっくりと襖が開くと、入り口に背を向けた後ろ姿に目が止まった。
『ドキン』っと心臓が高鳴る。
見覚えのある背中に、俺の心臓がドキドキと早鐘を打ち始めると、ゆっくりと後ろ姿の人物がこちらへと振り向いた。
その顔は、見間違えたりするはずの無い人の顔だった。
俺の顔を見ると、その人物はふわりと爽やかな笑顔を浮かべた。
そう。そこに座っていたのは、秋月翔先輩だった。
入口で唖然としている俺に
「あ! あおちゃん、ごめんね。ここに座って!」
何も知らない母さんが、自分の隣の座布団をポンポンと叩いている。
予想だにしていない状況に、俺の思考回路が止まっていると
「葵様?」
背後から田中さんの声が聞こえた。
ギギギ……っと古い機械が音を立てて鈍く動くかのように、俺は田中さんに振り向くと
「あの……田中さんが母さんの再婚相手では……無い?」
と質問すると
「やだ~、あおちゃん。田中さんが相手だとしたら、若すぎるでしょう?」
呑気な母さんが笑いながら俺にツッコミを入れている。
(ですよね~)
とんでもない状況に頭を抱えたい気持ちをグッと堪え、俺は母さんの隣に腰かけた。
入り口はお店を知っている人しか見つけられない、オフィスビルの裏側にある専用エレベーターに乗ってしか入れない。
専用エレベーターが開くと、40代後半位の品の良い女性が待っており
「お待ちしておりました」
と言うと、木の上がり框に靴を脱いで上がるように言われる。
「靴はそのままで結構です」
そう言われて、広い廊下を案内の女性に連れられて着いて行く。
廊下の先に部屋が一つだけあり、閉まっている襖から母さんの笑い声が聞こえて来た。
俺の後ろを歩いていた田中さんに
「あの……他に部屋は?」
と聞くと
「このお店は、限定2組だけのお店なのですよ。入口が別々になっておりますので、他のお客様と通路で会う事もありませんよ」
そう言われて
(お高いお店!!)
と、卒倒しそうになる。
「社長が、気兼ねなく会話して欲しいと配慮なさっての事ですので、気になさらないで下さい」
笑顔で言われ、(社長?)と首を傾げる。
もしかして、田中さんは母さんの再婚相手では無いのかもしれないと思ったその時
「失礼致します。お連れ様が到着なさいました」
女性の声にハッと我に返る。
ゆっくりと襖が開くと、入り口に背を向けた後ろ姿に目が止まった。
『ドキン』っと心臓が高鳴る。
見覚えのある背中に、俺の心臓がドキドキと早鐘を打ち始めると、ゆっくりと後ろ姿の人物がこちらへと振り向いた。
その顔は、見間違えたりするはずの無い人の顔だった。
俺の顔を見ると、その人物はふわりと爽やかな笑顔を浮かべた。
そう。そこに座っていたのは、秋月翔先輩だった。
入口で唖然としている俺に
「あ! あおちゃん、ごめんね。ここに座って!」
何も知らない母さんが、自分の隣の座布団をポンポンと叩いている。
予想だにしていない状況に、俺の思考回路が止まっていると
「葵様?」
背後から田中さんの声が聞こえた。
ギギギ……っと古い機械が音を立てて鈍く動くかのように、俺は田中さんに振り向くと
「あの……田中さんが母さんの再婚相手では……無い?」
と質問すると
「やだ~、あおちゃん。田中さんが相手だとしたら、若すぎるでしょう?」
呑気な母さんが笑いながら俺にツッコミを入れている。
(ですよね~)
とんでもない状況に頭を抱えたい気持ちをグッと堪え、俺は母さんの隣に腰かけた。