まだ先だと思っていたが、月日というものはあっという間に過ぎるものだ。
ゴールデンウイークに突入する土曜日、俺は着慣れないスーツに身を包んでいた。
セミオーダーのダークブラウンのスーツに、ラベンダー色のシャツ。
綺麗なワインレッドの高級ブランドネクタイを締めて、緊張していた。
食事会の一週間前、我が家にお届け物が届いたのだ。
母さんには、ワインレッドのシックなドレス。
そして俺には、母さんのドレスと同じ色の高級ブランドのネクタイと、ラベンダー色のセミオーダーシャツと一緒に、ダークブラウンのセミオーダーのスーツとが届いたのだ。
母さんはプレゼントされるのを知っていたらしく、俺のサイズはちょうど高校の制服を作るのに測っていたので、俺に一歳確認せずに作ってもらったのそうだ。
(一言、言ってくれても良いと思う!)
おそらく〇ナカとか、〇山とかの紳士服のお店で買ったのではなく、きちんとしたテーラーで作った物だろう。
だってスーツの生地の肌触りとか、茶色の色味がさ……全然違うんだよ!
いかにも高級品って感じでさ!
庶民の俺なんかが着ても良いものか、凄く悩んだよ!
ちなみに、うちの学校は超有名私立高校だ。
何で有名かと言うと、超お金持ちしか入学出来ないというスーパーお坊ちゃま、お嬢様学校なのだ。
学費はべらぼうに高いけど、その分、高い教育レベルと最先端設備。
そして、ここは官邸か!っと思う程に徹底したセキュリティーなのだ。
幼稚園から小中高大の一貫校なので、外部入学は非常に狭き門。
しかも試験を受ける為には、元卒業生からの推薦状が必要となる程だ。
何故、そんな話を突然したかと言うと、一応、俺も神崎グループ総裁である神崎家直系の息子なわけですよ。
しかも、親父の兄である秋治おじさんが未婚なものだから、正当後継者は現在、俺一人なわけです。
でもね、母さんは俺を一般人として育てたかったらしい。公立の小・中学校に通わせ、高校も本当は公立で良いと思っていたらしいが、親父と母さんの出会った学校を見て欲しいという変な欲から、思い出受検させたのが運の尽き。(何せうちの学校、体育祭は非公開。文化祭は在校生の招待券が無いと入れないし、平日の昼間しかやらないのだ)
ちなみにうちの学校にも、特待生制度がある。
外部入学で成績優秀者は、学費から学校で掛かる経費が全部免除なわけ。
それで、俺より二つ年上の蒼ちゃんが(母さんの推薦で)受検して、見事、全教科パーフェクトで入学しているわけですよ。
こんな凄い家庭教師が傍にいて、落ちるわけがない。
……とはいえ、俺は頭脳が庶民だからさ。
蒼ちゃんみたいに、特待生にはなれなかった。(まぁら彰三に奪われたんだけどね!)
正直、入学も諦めていんだよね。
でもさ……ほら、そこは神崎グループ総裁の直系だからさ。
じいちゃんとばぁちゃんが援助してくれて、現在に至る。
それで、ここからが本題ね。
そんな超金持ちばかりの学校に居ると、自然と彼らが身に着けている高級品を目にするようになるし、学校の授業で見学する絵画などの美術品等は、本物を見せてくれる。
そのお陰で、俺の目はすっかり肥えちゃったってわけ。
だからさ、このスーツ一式を見た時、卒倒しそうになったよ。
しかもさ、母さんのお相手。
プレゼントのスーツの箱に
『葵君を思って選びました。当日、これを着た葵君に会えるのを楽しみにしています』
とかメッセージカード入れちゃってさ。
俺は女子じゃないっつうの!
思わずあまりのキザなメッセージに、破り捨てようかと思った程だよ。
だけどさ、折角、俺を思って書いてくれたメッセージ。
破り捨てるのは失礼だと、そっと机の引き出しにしまったんだ。
後に、この行動をした自分を、心の底から褒め称える事になろうとは、この時は思いもしなかった。
ゴールデンウイークに突入する土曜日、俺は着慣れないスーツに身を包んでいた。
セミオーダーのダークブラウンのスーツに、ラベンダー色のシャツ。
綺麗なワインレッドの高級ブランドネクタイを締めて、緊張していた。
食事会の一週間前、我が家にお届け物が届いたのだ。
母さんには、ワインレッドのシックなドレス。
そして俺には、母さんのドレスと同じ色の高級ブランドのネクタイと、ラベンダー色のセミオーダーシャツと一緒に、ダークブラウンのセミオーダーのスーツとが届いたのだ。
母さんはプレゼントされるのを知っていたらしく、俺のサイズはちょうど高校の制服を作るのに測っていたので、俺に一歳確認せずに作ってもらったのそうだ。
(一言、言ってくれても良いと思う!)
おそらく〇ナカとか、〇山とかの紳士服のお店で買ったのではなく、きちんとしたテーラーで作った物だろう。
だってスーツの生地の肌触りとか、茶色の色味がさ……全然違うんだよ!
いかにも高級品って感じでさ!
庶民の俺なんかが着ても良いものか、凄く悩んだよ!
ちなみに、うちの学校は超有名私立高校だ。
何で有名かと言うと、超お金持ちしか入学出来ないというスーパーお坊ちゃま、お嬢様学校なのだ。
学費はべらぼうに高いけど、その分、高い教育レベルと最先端設備。
そして、ここは官邸か!っと思う程に徹底したセキュリティーなのだ。
幼稚園から小中高大の一貫校なので、外部入学は非常に狭き門。
しかも試験を受ける為には、元卒業生からの推薦状が必要となる程だ。
何故、そんな話を突然したかと言うと、一応、俺も神崎グループ総裁である神崎家直系の息子なわけですよ。
しかも、親父の兄である秋治おじさんが未婚なものだから、正当後継者は現在、俺一人なわけです。
でもね、母さんは俺を一般人として育てたかったらしい。公立の小・中学校に通わせ、高校も本当は公立で良いと思っていたらしいが、親父と母さんの出会った学校を見て欲しいという変な欲から、思い出受検させたのが運の尽き。(何せうちの学校、体育祭は非公開。文化祭は在校生の招待券が無いと入れないし、平日の昼間しかやらないのだ)
ちなみにうちの学校にも、特待生制度がある。
外部入学で成績優秀者は、学費から学校で掛かる経費が全部免除なわけ。
それで、俺より二つ年上の蒼ちゃんが(母さんの推薦で)受検して、見事、全教科パーフェクトで入学しているわけですよ。
こんな凄い家庭教師が傍にいて、落ちるわけがない。
……とはいえ、俺は頭脳が庶民だからさ。
蒼ちゃんみたいに、特待生にはなれなかった。(まぁら彰三に奪われたんだけどね!)
正直、入学も諦めていんだよね。
でもさ……ほら、そこは神崎グループ総裁の直系だからさ。
じいちゃんとばぁちゃんが援助してくれて、現在に至る。
それで、ここからが本題ね。
そんな超金持ちばかりの学校に居ると、自然と彼らが身に着けている高級品を目にするようになるし、学校の授業で見学する絵画などの美術品等は、本物を見せてくれる。
そのお陰で、俺の目はすっかり肥えちゃったってわけ。
だからさ、このスーツ一式を見た時、卒倒しそうになったよ。
しかもさ、母さんのお相手。
プレゼントのスーツの箱に
『葵君を思って選びました。当日、これを着た葵君に会えるのを楽しみにしています』
とかメッセージカード入れちゃってさ。
俺は女子じゃないっつうの!
思わずあまりのキザなメッセージに、破り捨てようかと思った程だよ。
だけどさ、折角、俺を思って書いてくれたメッセージ。
破り捨てるのは失礼だと、そっと机の引き出しにしまったんだ。
後に、この行動をした自分を、心の底から褒め称える事になろうとは、この時は思いもしなかった。