彰三とは保育園がお休みの土日等に一緒に遊んでいたので、幼い頃は俺と赤地兄弟が一緒に居るのが当たり前になっていた。
蒼ちゃんが大好きな俺と、俺に着いて歩く彰三の構図がまるで三角関係みたいだと、よく近所の人に笑われていたっけ。
そういえば、その頃にこんなエピソードがあった。
彰三に
「俺ね、あおちゃんが大好きなんだ。将来、結婚しよう」
と言われ
「俺は蒼ちゃんと結婚するから、彰三とは結婚しない」
と答えたら、彰三に大泣きされてしまったのだ。
すると蒼ちゃんは困った顔をして
「あおちゃん。僕たちは男の子同士だから、結婚出来ないんだよ」
そう答えたものだから、今度は俺が大泣きしてしまい、そんな俺達を見て蒼ちゃんが大泣きした事があったのだ。
何も知らない母さん達が、そんな俺達を見て困った顔をしていたっけ。
そんな環境の中で育った俺は、高校生になった蒼ちゃんと生活リズムの違いで会えなくなってしまった事が心の底から不満だった。
しかも高校に入ってから出来たら友達と仲良くて、俺と会うよりそちらを優先されているのにも腹が立っていた。蒼ちゃんに会えないストレスを抱えていると、彰三から「高校はテスト期間、帰りが早い」という情報を入手した。
俺はテスト期間中の金曜日。
母さんの帰りが遅くなると聞いて、赤地家に泊まる事にして蒼ちゃんの帰りを待っていた。
すると、玄関から
「ただいま~」
蒼ちゃんの声が聞こえた。
俺はダッシュで玄関に走り込み
「蒼ちゃん、お帰り~!」
と、大好きな蒼ちゃんに抱き着いた!
……が、抱き着いた感触が違う。
いつもの華奢な身体付きでは無く、ガッシリと鍛え上げられた筋肉質な身体だった。
驚いて見上げたその時、唇に柔らかい感触が触れた。
一瞬、何が起こっているのか理解出来ないでいたが、見上げた見知らぬ人と唇と唇が重なっているじゃないか!
驚いた俺の目に飛び込んで来たのは、綺麗な漆黒の瞳だった。
切れ長の目に綺麗な漆黒の瞳。
思わずうっとりと見蕩れていると
「翔、お前の荷物……」
俺が抱き着いている人物の背後から、蒼ちゃんの声が聞こえてハッと我に返った。
「ぎ……ぎゃー!」
思わず後退りして叫ぶと
「葵! どうした!」
彰三が慌てて飛び出して来た。
すると蒼ちゃんは深い溜め息を吐いた後
「彰三、あおちゃんが僕と間違えて翔に抱き着いただけだよ」
と言うと
「ややこしくなるから、お前は少し外して」
そう言って、彰三をリビングのドアの向こうへと押しやった。