君は完璧な弟だ。仕事に明け暮れる私に代わって家のことは全てやってくれている。料理、洗濯、掃除、妹弟の子守りまで。
 学校の勉強やバイトで疲れているのにそんな顔は見せず、家に帰った私を笑顔で出迎える。

 そんな君の初めての反抗。

◻︎◻︎◻︎

 職場に戻ると昼休みは残り10分を切っていた。

 急いでお弁当を食べようと席に着くと同僚が話しかけてきた。
「また弟さん?」
「はい。普段はすごく良い子なんですけどね。…反抗期かな?」

 全部食べられないなと思いながら、お弁当箱を開けるとすぐに食べられるサンドイッチが入っていた。今日も計画的犯行だな。と思っていると同僚が羨ましそうに眺めながら言う。
「今日も弟さんの手作り弁当?良いよね〜。家事全部やってくれて、おまけにイケメン!」
「イケメン…。」

 確かに君はイケメンだ。姉の私でもそう思う。他人から見たら尚更だ。隣を歩いているといつも周りの人からの視線を感じる。
「ウチの子、芸能界に入れるくらいイケメンですからねー。」
「紹介してよ〜。」
「駄目ですよ!夏空はまだ高校生なんだから。」

 まだ子供だと。…そう思ってた。でも、いつからか私の背を追い抜き、可愛かった声はもう男性の声に変わっていた。そんな君が側にいてくれる理由。それは君が弟だから。
 弟じゃなくなってしまったら私の元を離れてしまう。ずっと君の側に居たい。
 …でも、時々考えてしまう。もし、君が誰かを好きになって、その人と恋に落ちてしまったら。それでも側にいてくれるだろうか、隣で笑ってくれるだろうか。私の弟として。