私が椅子に腰をかけると、君と美桜、冬馬が顔を見合わせて悪戯っぽく笑っている。席を立ったと思ったら、部屋の電気が消された。
「え?」
 3人のクスクスとした笑い声だけが暗闇の中で響く。
 その瞬間、フワッと暗闇の中に灯りが灯る。せーの。という小さな掛け声の後に。
「「「お姉ちゃん。お誕生日おめでとう!」」」
 ロウソクが3人の笑顔を灯し出す。
「…ありがとう。」

 私の選択はきっと間違いじゃなかった。この先、何回も後悔しても家族みんなでケーキを囲む度、これで良かったのだと思えるだろう。
 ロウソクに照らされた君を見つめる。 
 ねえ、夏空。私と家族になってくれてありがとう。弟でいてくれてありがとう。好きでいてくれてありがとう。
「ハッピーバースデー」
と君の口が動く。

 もう自分の誕生日が嫌いではなくなった。

 ロウソクの灯りを吹き消す。この先もずっと家族みんなでケーキを囲んで幸せに過ごせますように。と願いを込めて。