その日の深夜、リビングでコーヒーを飲むあの人に期待を込めて訊ねる。
「姉ちゃん。もしかして、彼氏出来た?」
「ううん。」
 照れてしまうのを隠して続ける。
「夏祭りにデートするって約束。俺とってことでいい?」
「そうだよ。」
嬉しくて笑みが溢れる。でも、これは最初で最後のデート。
 それでも良い。あの人と一度でも恋人になれるのなら。でも…。
「姉ちゃんは大丈夫?傷つかない?本当にいいの?」
「私は大丈夫。最後に恋人になろう、あの頃みたいに。それでちゃんと姉弟に戻ろう。」
「うん。」

 このままでは姉弟には戻れない。何かきっかけがないと。そう思ってた。そのきっかけは幸運にも僕がずっと願ってきたことだった。

 最初で最後の恋。最初で最後の恋人。それがあの人で本当に良かった。