「あ、あ、ですが、かんざ……ルカのことを見ているうちに、その小さな……あ、すみません。身体の中に秘めた闘志を感じたんです。それで、もっと好きになりました」
 部屋のソファに浅く腰掛け、両膝に握りこぶしを置いて、噛み噛みになりながらそう話す別所の額には、汗がにじんでいた。ほんと、真面目。

「俺、男だしアイドルだけど、ほんとにいいの?」
「それは自分の台詞です。自分のどこがいいんですか?」
「俺もそれ、疑問」
 
 握りこぶしをどかして、どかっと別所の膝の上にまたがった。両太もものボリュームが凄いから、乗っかると股の間が引っ張られて痛い。

「……ルカ」
 俺の取った体勢が辛いことに気がついた別所は、ソファに深く腰掛け直すと、俺の腰を自分の方へと引き寄せた。

「ほんと、どこがいいんだろ。こんなお世辞も愛想笑いもできないくそイケメンの」
「すみません」
「分かってるよな。俺これから売れてくアイドルだから、このことは絶対に内緒な」
「大丈夫です。自分、お客様の個人情報は絶対に洩らしません」
 ははは、そこは確かに固そうだ。

 ゆっくり身体を傾けて、別所の唇に自分の唇を寄せる。別所も今度は心の準備ができていたらしく、不安定に傾いた俺の身体をがっしりと両腕で支えてくれた。
 別所の唇が、俺のチャームポイントである目尻にそっと当てられる。お返しに、俺は別所の首筋にある縦二つのほくろへキスをしてやった。

「っ」
「へぇ。別所トレーナーの弱点みいっけ」

 くっと力の入った首筋から顔を上げてみれば、そこにはパソコンの画像でしか見たことのない別所の笑顔があって、腹立たしいことに、俺はもっと別所が好きになってしまったんだ。

END