ウルトラスターランドに再び参上したルカちは、前回とは一味違う。今日は最後まで走り切ってきて、と社長からもOKが出た。この可愛いルックスに一生懸命さが加わって、親世代からの反応もいいらしい。スポンサーの財布も掴んじゃいなさい、と手のひらを返したように俺の運動神経を推すあたりは、さすが社長だ。

 前回視聴率の良かったウルトラスターランド特番ということで、ディレクターとカメラマンの数も増えている。よし、別所にしごかれた成果を見せてやるんだぜ。スタートの声が掛かり、俺を含む出演者が一斉に走り出した。

 仲間の解放ミッション成功。トラップ回避成功。追跡者大量放出の阻止成功。順調順調。
 ロケ前日、別所トレーナーが念入りにストレッチを施してくれた俺の腸腰筋をはじめ、身体中の筋肉が酸素を効率よく取り込んでいるのが分かる。ダッシュやトリッキーな動きをしやすいように、ムキムキから方向転換をしたのがよかったらしい。別所の判断は、悔しいが当たっていた。
「えっ」
 追跡者の一人が小さく声を上げて、俺は思わずほくそ笑んだ。
 共演者の女の子を先に逃がそうと、俺がおとりになった場面。確保されてもおかしくない距離まで詰められたが、俺は追跡者の脇をすり抜けて壁を蹴り、方向転換をした。ウォールランだ。プロほどキープはできないが、それでも追跡者を足止めさせるには十分だ。
 追跡者を置いてけぼりにして、俺は走る。カメラマンが驚いている。めちゃくちゃ気持ちいい。

 だが、戦況は逆だった。持たされているスマホから、生き残っている共演者は、俺を含めてあと三人しかいないというメッセージが流れてきた。
 そうだ。自分だけが思い通りに動けていても、全員が追跡者に確保されてしまったら負けなんだ。今日は思い切り活躍していいんだから、俺がみんなを助けに行かないといけない。

 残った三人のうち、注目の若手女優にカメラマンが数人マークに行ってしまったので、俺のマークはがら空きになった。ちょうどいい、少し足を止めて作戦を練ろう。
 幸いなことに、疲れや身体の痛みはない。足を止めている間も小さく身体は動かしていて下さい、と別所に言われたのを思い出す。