瑠夏に……彼女?
「あゆちゃんが夏休み前に告る予定らしい」
あゆちゃんって、歩梨さんのこと?
「……でもっ、
つ、付き合うかどうか、わかんなくね?」
動揺してんのか。声が震える。
「付き合うと思うよ。
頭からフるより一回付き合って、後から『やっぱ友達のほうがいい』って断ればギクシャクせずに元に戻りやすいし」
「……」
「瑠夏がそういう、ちょっと策士っぽい性格してんのはよくわかってるから」
佐野は本当に瑠夏のことをよくわかってるな。
瑠夏がそう言ったわけじゃない。佐野の憶測ではあるけど、
そんなこと言われたら、おれだって思うよ。
『おれも同じように告白したら、元の友達に戻れるかな』って。
でも無理だな…
まず、付き合ってもらえないや。
……おれ、男だもん。
「だからたぶん、夏休み中はあゆちゃんに持ってかれることが多そうだから、
碓氷はオレらと遊ぼうよ」
「……考えとく」
短く返事をして、カバンを持って教室を出た。
思うことは色々あった。
後からフるつもりで付き合うなんて、瑠夏ちょっとクズいなーとか。
なんで瑠夏がいないのに佐野たちと遊ぶ約束しようとしたんだーとか。
……それより何より自分の中で大きかったのは
たとえ嘘でも、瑠夏が誰かと付き合うことが、『嫌だ』と思ったこと。
すぐ諦められると思っていたのに、
全く気持ちが変わっていないことを、思い知らされた。