──…


ずっとモヤモヤしたまま放課後になって、

帰る支度をしていると、瑠夏のグループが教室を出ていく。


「テストも終わったし、もうすぐ夏休みだなー」

「遊びてー」

「どうせ遊ぶだろ」


賑やかな輪の中心で、瑠夏が笑ってる。

おれが瑠夏を避け始めてから、瑠夏はおれの方を見なくなった。

だからもちろん、おれに笑顔を向けられることはない。

……このままでいたら、これから先ずっと、瑠夏はおれを見てくれなくなる。


おれは……それでいいの?


「あ、碓氷」

「えっ!?」

「…そんなビックリする?」


ぼーっとしていたら、さっき教室を出ていったはずの佐野が戻ってきていて、思わずびっくりしてしまう。

瑠夏もいるのかと思って視線を左右にやっても、佐野一人しかいなかった。


「瑠夏はいないよ。大丈夫」

「え、あぁ…」


『大丈夫』って、

いなくてホッとしてるわけじゃないんだけど……

………って、これじゃあ、いてほしかったみたいじゃん…。

自分から避けてるくせに、なにを望んでんだよ。


「昼休み、オレのこと探してたって松雪さんに聞いたけど」

「あ……うん。
テスト勉強のお礼言おうと思ったんだけど…」

「それだけ?」

「……本当はジュースを買ってたんだけど…
渡すタイミングないなと思って飲んじゃって…」

「あーいいよそういうのは。
オレもあの日碓氷がくれたケーキ食ったし。オレばっかもらうことになるから」


『気にしなくていいよ』と言ってくれる佐野。

話はそれだけだったから、用は済んだしすぐに帰るかと思っていたのに。


「碓氷、夏休み暇?」

「え?」

「暇な時遊ぼうよ。
瑠夏は呼ばないからさ」


佐野たちの中でおれは『相当瑠夏のことが嫌い』って認識なのか、『瑠夏は呼ばない』って言われる。

佐野からしたらそれが優しさだと思ってるんだろうけど…

……瑠夏がいないのに誘いにのる意味ってあるんだろうか…?

だって、佐野たちはおれ以外にも友達いるじゃん。