それが恋になるまで



……あぁ。でも。


『間違えた』
『忘れて』


この気持ちは、報われない。


『男同士のキスなんてノーカン』


おれ、男だもん。

絶対キモいって思われる。〝友達〟にすら戻れなくなる。

この気持ちは、絶対知られたらダメ。

………消さなくちゃ。


せっかく自分の気持ちに気付いたのに、すぐ諦めなくちゃいけないなんて…

幸せな時間がなさすぎて、なんて残酷なんだとイタズラがすぎる神様を呪いながら眠りについた。







「じゃあなー瑠夏」

「おう」


しばらく眠った後、目が覚めたのは夕方頃で。

ちょうどその時そろそろ解散しようって話してたみたいで、すぐ帰ることになった。


「瑠夏…ベッド、ありがとう。
迷惑かけて、ごめん」

「ごめんとかいいから。
気をつけて帰れよ」


玄関先で話してたら、佐野がポンポンとおれの背中を叩いた。


「碓氷はオレらが送るから、大丈夫」


3人で『お邪魔しました』と言ってから歩きだす。

最後に見た瑠夏は、なんだか悲しそうな顔をしていた…気がした。

…まぁ、気のせいだと思うけど。



「……今日は、ごめん。
おれ、あんまり一緒に遊べなくて…」

「いいっていいって。体調悪かったんだから仕方ない!
しかし、碓氷ってば寝不足で頭痛くなるとか繊細なんだなー。女子かよ〜」


瀬戸にケラケラ笑われる。

その言い方、女子にも失礼な気がするけど…瀬戸はそういうの気付けないタイプだよな。

でも…そっか…女子かぁ……。


「……女だったら、よかったのにな…」


そしたら美少女アニメが好きでも『キモい』とか言われないし

……瑠夏にも、好きになってもらえたかもしれないのに。


「えッ!!碓氷女子になりてーの!?」

「いや…だったらよかったってだけで、なりたいわけでは…」

「なんで?男のほうがいいじゃん」


そりゃあ男であることが嫌なわけじゃない。

女だった方が好都合だったかもって、想像してしまっただけ。