『そんなに気にしなくていいんじゃない?』


無理だよ佐野。おれ、そんなことできない。

ずっとずっと、頭の中支配してんだ。

瑠夏の柔らかい唇の感触も、あの時すぐ近くにあった瑠夏の匂いも。

消えない。消えるはずない。

だって、おれが瑠夏を意識してしまってるから。

瑠夏は誰かと間違えただけで、おれのことは〝友達〟としか思ってなくても

おれは……もう瑠夏を、〝友達〟って目で見てないんだ。


「…………すき…」


瑠夏の匂いに包まれてるせいか、まるで寝言のように無意識に言葉がこぼれた。

……え…おれ、今、

───『好き』って…?

自分からこぼれた言葉なのに、かぁっと顔が熱くなった。

『好き』って気持ちなら、今までモヤモヤしてたこと、全部納得がいく。

瑠夏が誰かと付き合うのが嫌だったのも、

キスされたことが本当は嬉しかったことも…


そっか…おれ、

ずっと瑠夏のこと、〝好き〟だったんだ。


おれの方がとっくに、瑠夏のこと〝友達〟なんて思ってなかったんだ。