布団を被って顔を隠してたら

(くる)まっていた布団ごと、体が宙に浮いた。


「!?」


状況把握が出来なくて布団から顔を覗かせたら

おれはどうやら、瑠夏に〝お姫様抱っこ〟されてるらしい。


……え、いや、……は!?!?


「な、何して…!!」

「俺の部屋連れてく。
床よりベッドがいいだろ」


佐野たちに『ちょっと待ってて』と声をかけると、おれを抱えたまま瑠夏はリビングを出て階段をのぼる。


「瑠夏、大丈夫だから、おろせよ…!」

「大丈夫じゃないだろ」

「重いし、ひとりで歩ける…!」


おれ、男だぞ。

そこまでデカくもないけど、女よりはデカい体なんだぞ。

なんでそんな軽々、持ち上げられるんだよ。

なんでこんなこと、簡単に出来るんだよ。

おれの気も知らないで。


「おれのことなんていいから、瑠夏は佐野たちのとこ戻れよ…」

「部屋に運んだら戻る」

「……1秒でも早く、いなくなってほしいんだよ…」


誰のせいで、こうなってると思ってんだよ。

キスも、お姫様抱っこも


〝友達〟相手に軽々しくやるんじゃねーよ。


友達にしないようなことされる度、

おれを誰かと重ねてるように見えて、嫌になる。


───胸が、苦しくなるんだよ。


「……運んだらすぐいなくなるから、
今だけは我慢して」


どんな感情でそう言ってるのかわからない、無機質みたいに聞こえた声。

いつもみたいな優しい声じゃない。

怒ってるのか?怒りたいのはこっちなのに。


もう、放っておいてほしいのに。

声は優しくないのに、心配してるみたいな行動すんなよ。