──……


「碓氷ー。
おーい、碓氷」

「……」

「もう昼前だぞ、そろそろ起きろ?」


何時間寝たのか、瀬戸に寝ている体を揺すられて目が覚めた。

……けど、朝起きた時より頭が痛い。


「……碓氷、大丈夫か?
顔色悪いぞ?」


瀬戸はこういうのに敏感なのか、おれが何も言ってないのに心配してくれた。


「……瑠夏は?」

「藍と一緒に昼飯買いに行ってる。
昨日はオレと藍を追い出したくせに、今日は自分で行くって出てったよ」

「そっか…」

「それより、本当に顔色悪いぞ?
寝心地悪すぎて体調崩した?」


寝心地悪すぎたのは主におまえのせいだけどな。

けど、明らかに一度目が覚めた時より頭が痛くてこめかみに手を当てた。


「……頭痛い」

「まじ!?
瑠夏たちに薬買ってくるように頼もうか!?」

「……いい。寝てれば治る…」


あんまり眠れなかったからと、色々考えすぎたんだろう。

何も考えずに眠れれば、きっとすぐ治る…。


「枕が硬いんじゃないか?
瑠夏にもうちょい良いのないか聞いてみる…」


瀬戸がスマホを取り出した時

玄関の方から「ただいまー」という声が聞こえた。


「あ、ちょうど瑠夏帰ってきた」

「瀬戸…いいって、気にしなくて…」

「だからってほっとけないだろ!
瑠夏ー!」


瀬戸がドタドタと大きな音をたててリビングを出ていく。

……やめてくれよ。そんなことしなくていい。

瑠夏に迷惑かけたくない…。


「瀬戸、なに?」

「碓氷が、頭痛いって」

「……は?」

「だから、もうちょっと良い枕ねーか!?」


……今必要なのは、『良い枕』じゃなくて『静かに眠れる環境』だよ。

そんなことを考えながら頭を押さえていると、バタバタとすごい勢いで足音がやってきた。


「千早」

「……瑠夏」

「……大丈夫か?」

「……ゆっくり眠れれば、大丈夫だから…」


迷惑をかけたくないと思ってるのは本当だけど、困らせたいと思ってる自分もいて。

『おまえのせいで眠れなかった』って意味も込めて、そう言った。